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覚え書:「石原慎太郎を読んでみた [著]栗原裕一郎、豊崎由美 [評者]佐々木敦」、『朝日新聞』2013年10月27日(日)付。

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石原慎太郎を読んでみた [著]栗原裕一郎、豊崎由美
[評者]佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)  [掲載]2013年10月27日   [ジャンル]ノンフィクション・評伝 


■浮かび上がる小説家の肖像

 舌鋒鋭い書評家の豊崎由美と歯にきぬ着せぬ評論家の栗原裕一郎が、石原慎太郎の小説を片っ端から「読んでみた」本である。もとは月1回で1年間続いたトークイベントであり、後半では映画評論家の高鳥都と作家の中森明夫がゲストに迎えられている。
 確かに近年の石原慎太郎は、政治家としての顔が圧倒的に知られており、小説はいまだに芥川賞受賞作『太陽の季節』か、石原裕次郎を描いた『弟』ばかりが挙げられる。そこで2人は入手困難な作品も含め、次から次へと「石原慎太郎の小説」を読んでゆく。ルールとされたのは、「政治家・石原慎太郎」と「元芥川賞選考委員・石原慎太郎」をカッコに括(くく)るということ。あくまでも一人の作家として評価しようというのである。そしてその結果、おそらく両人とも事前には想定していなかった「小説家石原慎太郎」の肖像が、じわじわと浮かび上がってくるのだった。
 デビュー作「灰色の教室」から始まり、「『太陽の季節』は本当に芥川賞にふさわしかったのか?」、三島由紀夫との比較、知られざる長短編の数々、そして知る人ぞ知る傑作『わが人生の時の時』まで、毎回テーマを掲げて「メッタ斬り」してゆく様子は痛快であると同時に、2人の読み手の公平さと誠実さを窺(うかが)わせる。「一人の作家として評価」と述べたが、正確には作品ごとに評価がなされており、つまり是々非々ということだ。
 当たり前のことだが、埋もれた良作もあれば酷評されるものもあり、一編の小説においてさえ魅力と瑕疵(かし)が両方ある。ここで下される判断に異を唱える者もいるだろうが、2人とも自己の評価が絶対だとは思っていまい。だが確実に言えることは、本書を読んで「石原慎太郎の小説」を読みたくならない者はいないだろう、ということである。愛も尊敬も無関係な、これこそあるべき「文芸評論」の姿である。
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 原書房・1890円/くりはら・ゆういちろう 65年生まれ。評論家。とよざき・ゆみ 61年生まれ。ライター。
    --「石原慎太郎を読んでみた [著]栗原裕一郎、豊崎由美 [評者]佐々木敦」、『朝日新聞』2013年10月27日(日)付。

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[http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013102700004.html:title]


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