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覚え書:「生理用品の社会史―タブーから一大ビジネスへ [著]田中ひかる [評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)」、『朝日新聞』2013年10月27日(日)付。


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生理用品の社会史―タブーから一大ビジネスへ [著]田中ひかる
[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)  [掲載]2013年10月27日   [ジャンル]社会 


■意識変えた使い捨てナプキン

 以前に生理用ナプキンを燃やそうとしたことがある。百円ライターを壊しても火すらつかなかった。高分子吸収体って何者なんだ。そしてこういうものがなかった時代、女たちは毎月どうやって経血の処置をしてきたんだろう。
 あまり公に語られてこなかった生理用品の歴史。類書も少なく、常々知りたいと思っていた。
 古代から太平洋戦争までの長い期間、経血処置に何がどう使われてきたか、不浄とみなされ、タブー扱いされていたことなどが書かれた前半も興味深いが、白眉(はくび)は第3章、使い捨てナプキンを日本人の体形に合わせて開発、商品化したアンネ社の登場。
 1961年、当時口にするのも憚(はばか)られた月経を「アンネ」と呼ぶ提案と、水洗トイレに流せる使い捨て紙ナプキンは、多くの女たちに衝撃と喜びをもって、受け入れられた。しかも快適な経血処置を提供したいという信念のもとに、この製品と呼称を創り出したのは、坂井泰子(よしこ)という27歳の女性社長。
 若く美人であるために、世間から必要以上に騒がれもてはやされ、一方で男性スタッフとのやりとりには、苦労した様子がうかがえる。当時宣伝を担当した渡紀彦の回顧文は、使用済み脱脂綿(ナプキン登場以前、広く使われていた)を見て「女性の恥部の乱舞」「業の集積」など、悪気は全くなく、むしろ善意と使命感に燃えていたのだろうが、見当違いな言葉ばかり。60年代に入っても月経に対する暗いタブー意識は、まだ色濃く残っていたのだ。
 こんな混乱を経て、使い捨てナプキンはあっという間に定着発展し、タブーを超え、日本は世界一のナプキン先進国となったのだ。
 そして現在のトレンドは、布ナプキン。使い捨てナプキンを批判する声もあるが、こうして俯瞰(ふかん)すると、日本人の意識改革に果たした役割の大きさが、しみじみとわかる。
    ◇
 ミネルヴァ書房・2520円/たなか・ひかる 70年生まれ。横浜国立大大学院で社会学専攻。『月経と犯罪』など。
    --「生理用品の社会史―タブーから一大ビジネスへ [著]田中ひかる [評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)」、『朝日新聞』2013年10月27日(日)付。

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