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覚え書:「書評:釜ケ崎語彙集1972─1973 寺島 珠雄 編著」、『東京新聞』2013年10月27日(日)付。

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釜ケ崎語彙集1972─1973 寺島 珠雄 編著

2013年10月27日


搾取される悲哀、怒り
[評者]正津勉=詩人
 良い本が出た。忘れてならないことは忘れるべきではない。一部が雑誌に発表されたまま未刊になっていた原稿が発掘され、四十年ぶりに日の目を見た。
 大阪・釜ケ崎、かつて「この街は日雇労働者二万人の活気であふれていた」。いくどか暴動もあった。本書は、同地区の歴史から、仕事、食住、行政、無縁仏の現状まで、「ドヤ(宿)」「アオカン(野宿)」「バンク(売血)」など地図・写真入りの全二百四十三項目にわたる釜ケ崎事典。寺島珠雄は二十世紀末に亡くなったアナキズム詩人。一九六六年から釜ケ崎に住んで、この街に根を下ろした住人らと親しく交わり、協力執筆者とともに書き継いだ底辺労働者による労働者のための渾身(こんしん)の釜ケ崎生活記録だ。
 当時、年末になると「ドヤ」がなく「アオカン」する者が一夜で五十人以上。「雨」なる項目では「傘なくて二十年間/霞町の立ちん坊/雨の降る日は柳を見る」という詩を、「石」では「われも石を投げ兼ぬる思い労働者を搾取して街の企業膨(ふ)くるる」という歌を引いて、底辺の悲哀と怒りにおよぶ。
 「釜ケ崎オンリー・イエスタデー」と帯にあるが、昔日でない、昨日のこと。いや違った。それこそ非正規労働者が二千万余人という格差と相対的貧困が広がる今日のこと。釜ケ崎化しつつある日本社会に向けた内なる抵抗と連帯の書だ。
 (新宿書房・3360円)
 てらしま・たまお 1925~99年。詩人。詩集『ぼうふらのうた』など。
◆もう1冊 
 塚田努著『だから山谷はやめられねえ』(幻冬舎アウトロー文庫)。東京・山谷での日々を描いたノンフィクション。
    --「書評:釜ケ崎語彙集1972─1973 寺島 珠雄 編著」、『東京新聞』2013年10月27日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013102702000169.html:title]


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釜ヶ崎語彙集1972‐1973
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