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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 『全員支え手』で発展模索=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年10月30日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
「全員支え手」で発展模索
過疎と高齢化の町 脱「企業誘致」

湯浅誠 社会活動家

 四国にある人口1万人ちょっとの小さな町に、1万坪の空き地がある。企業誘致のために確保された町有地だ。条例でそう決められている。
 この町有地の一角を「借りたい」という人が現れた。地元で障害者向け事業を運営している事業体。カフェやパン工房、雑貨店などを展開して、町内の健常者、障害者の雇用を生み出している。
 町は県庁所在地から来るまで1時間半かかり、交通の便は良くない。しかし口上が建設されれば、町に固定資産税による収入や雇用をもたらすだろう。
 他方、障害者向け事業は、規模は大きくないが、現に地域に雇用を生み出している。わずか2~3年の間に急拡大したのは、地域にそれだけのニーズがあるからだ。利益を受けているのは障害者だけでない。地域の若者たちも、人にやさしい仕事にやりがいを感じて働いている。
 皆さんがその町の町議会議員だったら、どうするだろうか。条例を改定して貸し出しに賛成するか、いずれ来るかもしれない企業のために空き地のままにしておくか--。
 この事例は、私にはとても象徴的に思える。今から10年後、20年後に、自分たちがどのような町で暮らし、老いていきたいかという将来ビジョンに関わる話だからだ。とりわけ、高齢化と過疎化、人口減少の著しい地方の小さな町が何で生きていくか、という問いに関わる。
 日本における地域開発は、伝統的に公共事業と企業誘致の二本柱だった。しかし、バブル崩壊後の経済停滞をカバーすべく大盤振る舞いされた公共事業が巨大な財政赤字を残したことは、すでに広く知られている。今や地方自治体は、その維持管理に苦しんでいる。
 グローバル化の進展で企業誘致が難しくなっていることも、周知に賊するだろう。グローバル都市間競争で生き残りを図る一部の大都市を除けば、日本の隅々に続々と口上が進出していくことへの現実味は乏しいと言わざるを得ないのではないか。
 公共事業も企業誘致も「外」からやってくるものだった。だが、それが困難になる中で、改めて「内」からの、内在的発展の可能性が問われている。それは、地域の全員が何らかの形で「支え手」になり、活性化に後見する全員参加型の地域だろう。「地域力」とは、従来の「中央とのパイプの太さ」から、どんな人にも役割を提供できる「アイデアと実行力」に移りつつある。
 そのような事例が全国各地で積み重なってきていることに、私は新しい日本社会の展望を見いだしている。

ことば 企業誘致の難しさ
 国内の企業立地件数はそもそも低迷を続けている。経済産業省によると、2012年の工場立地件数は1229件で、ピーク時の約5分の1。人口減による国内需要の低下が見込まれる中、人件費の低い海外に生産拠点を移す企業の動きは今後も続くと予想される。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 『全員支え手』で発展模索=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年10月30日(水)付。

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