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覚え書:「【自著を語る】『日本仏教の社会倫理 「正法」理念から考える』=島薗進さん」、『東京新聞』2013年11月05日(火)付。


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【自著を語る】

『日本仏教の社会倫理 「正法」理念から考える』 島薗進さん(上智大神学部教授、グリーフケア研究所長)

2013年11月5日

◆災害時に現れた本来の姿
 日本人の心には仏教的な思想やものの感じ方がしみ込んでいる。東日本大震災や福島原発災害ではいく度もそう感じた。
 お寺が被災者に解放された。また、僧侶が被災者に寄り添い、ともに苦難を担おうとし、人々の信頼を集める場面に出会うことも多かった。全日本仏教会の宣言文「原子力発電によらない生き方を求めて」(二〇一一年十二月)は大いに共感をよんだ。
 だが、これは古代以来の日本仏教のあり方から見て変則的なものではない。むしろ古来のあり方に即したものなのだ。近代的な仏教観が、それをおし隠していた。個人中心の宗教観や鎌倉仏教こそ大乗仏教の究極の展開形態だといった見方がじゃまをして、「社会倫理」の側面が見えにくくなっていたのだ。
 広く仏教史を見渡してみると、仏教徒は「社会に正法(しょうぼう)を具現する」という目標を掲げ続けてきたことが分かる。ゴータマ・ブッダ自身そうであったし、アショーカ王もそうだった。現代のタイの仏教やダライ・ラマの行動や言葉にもそうした考え方は顕著に見られる。
 そして日本の仏教史をつぶさにたどってみると、「正法」の理念はその根底を支えてきたことが分かる。正法(妙法)を掲げる『金光明経』『法華経』の影響力、正法流布の基礎と考えられた「戒壇」(授戒の場)への情熱、正法の後退を嘆く末法思想の力、『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』を著した道元のこだわり-「正法」理念の光に照らすとそれらの相互関係が見えやすくなる。
 正法を求めることは、社会に仏法を具現しようとすることでもある。このことを理解すると、行基や聖徳太子の時代から、戦前の日蓮主義を経て、戦後の創価学会や立正佼成会が取り組む社会・政治活動まで、一貫した社会倫理性が見えてくる。
 では、それは「慈悲」や「菩薩(ぼさつ)行」といった倫理思想とどう関わるのか。
 浄土真宗の他力思想は社会倫理としてどう位置づけられるか。仏教の社会倫理を問おうとした中村元や和辻哲郎や渡辺照宏らの学者の仕事を参考にしながら、私なりの見通しを提示している。 (岩波書店・二四一五円)

 しまぞの・すすむ 1948年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。専攻は近代日本宗教史、比較宗教運動論、死生学。東京外国語大助教授、東京大文学部教授などを経て現職。著書に『現代救済宗教論』など。
    --「【自著を語る】『日本仏教の社会倫理 「正法」理念から考える』=島薗進さん」、『東京新聞』2013年11月05日(火)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/jicho/list/CK2013110502000212.html:title]


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