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覚え書:「毎日出版文化賞の人々:/3 稲垣良典さん」、『毎日新聞』2013年11月07日(木)付(東京夕刊)。


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毎日出版文化賞の人々:/3 稲垣良典さん
毎日新聞 2013年11月07日 東京夕刊

 ◆企画部門 『トマス・アクィナス 神学大全』全45巻完結(創文社、3990-7980円)

 ◇哲学、科学の源流を邦訳

 「全く意外でした。地道な出版の意義を認めてくださり、ありがたい。ちゃんと見てくださる方が世の中にはいらっしゃるのだな、と感じます」

 トマス・アクィナスは13世紀のイタリアの神学者・哲学者。そのライフワーク『神学大全』はキリスト教神学の最高の達成とされる。京大名誉教授の高田三郎氏が1960年に邦訳に着手。稲垣さんは77年から加わり、昨年の完結まで全体のほぼ半分の巻を手がけた。半世紀余をかけ、全45巻39冊の翻訳達成は偉業と言っていい。

 「毎日、朝食前に2時間程度、訳していきました。原稿用紙5、6枚になる。大変でしたねと言われるが、トマスが好きだから苦にならなかった。リズミカルで明快なラテン語です。朝のうちに大事な仕事を終えるので、日中の時間をリラックスして過ごせました」と振り返る。

 『神学大全』は「神と神学」「倫理と人間」「キリスト」の3部構成。神やキリストを巡るさまざまな問答、学説を紹介した後、著者が詳しく自説を述べるスタイル。現代の哲学、科学の源流となった神学書だ。後世の思想家ロックへの影響など、政治思想史上の役割も見逃せない。

 トマス・アクィナスとの出会いは旧制佐賀高時代。教会の神父や進駐軍将校らの影響でカトリックの哲学書などに親しむようになった。東大の卒論でも取り組んだ。スケールの大きな著作を読むうち、「西欧の13世紀の仕事を、私も現代の日本でやりたい」と思うようになった。

 『神学大全』はゴシックの大聖堂に例えられるなど、一般人には別世界の特殊な書物とみなされがちだ。稲垣さんは「日本の人文科学、教養にとって重要な本。21世紀に生きるわれわれにとって切実な価値がある」と強調する。「生きるとはどういうことなのか。人間とは、善とは何か。中途半端ではなく徹底的に考えろとトマスは言っている。自分でものを考えようとする人に、手厳しい挑戦を突きつけてくる本なのです」【米本浩二】=次回は11日掲載

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 ■人物略歴

 ◇いながき・りょうすけ

 佐賀県生まれ。九州大名誉教授。専門は哲学、法哲学。南山大、九州大、福岡女学院大などの教授を歴任。中世哲学研究の第一人者。著書に『習慣の哲学』『抽象と直観』など。84歳。
    --「毎日出版文化賞の人々:/3 稲垣良典さん」、『毎日新聞』2013年11月07日(木)付(東京夕刊)。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20131107dde014040085000c.html:title]


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