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覚え書:「書評:働くアリに幸せを 長谷川 英祐 著」、『東京新聞』2013年11月10日(日)付。

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働くアリに幸せを 長谷川 英祐 著  

2013年11月10日


◆組織のあり方 人と比べる
[評者]小林照幸=ノンフィクション作家
 人が構成する組織では、ムダを省き、いかに個人の作業効率をあげて最大の成果を得るか、が論じられる。著者はアリやハチなどの身近な生き物の巣や生態を観察し、人を含めた組織における個と集団の力学を比較考証してきた。本書はそれらをエッセイで綴(つづ)る。
 アリは忙しく働いているイメージがあるが、巣を見ればある瞬間には全体の七割が寝ているなど、働いていないこともある。人から見れば非効率でも、著者は「アリにとれば全員が働くシステムより意義がある」「生き物は人間の倫理に従っていない」と考えた。
 ワーカーと呼ばれる働きアリの一生は奥が深い。若い頃は幼虫や卵の世話など巣の中の仕事を行い、加齢と共にエサ集め、防衛など死傷する確率の高い巣外の仕事に移行し死ぬまで働く。ゆえに高齢問題も人員整理もなく、集団での労働エネルギーと「個体の利益=幸福度」の収支は取れているという。
 アリやハチは「自分-巣-個体群」の生物学的系列のみだが、人では「自分-企業-経済社会」の社会的系列もある。とはいえ、アリやハチが巣という組織の維持、将来に遺伝子を遺すモチベーションについて、著者が述べる「すべての生物は基本的には幸せだ。幸せでなくなるような進化は原理的に起こらない」は目から鱗(うろこ)だった。
 企業経営では賃金、賞与のカットなど個と組織の利害対立から働くモチベーションの低下も問題となる。経営側が「厳しいから社員の我慢は当然」という意識は経営学では是でも、人材が有限の中では「個体の利益=幸福度」を下げない経営を考慮する重要性、組織における短期的効率と長期的存続の相関性の考察などが本書の眼目だろう。
 人もアリも生命の誕生から厳しい競争を生き抜いてきた戦友だ。ヒトは生物進化の系統樹では最上位だが、精神活動を行う人は、アリはじめ身近な生き物から組織論を謙虚に学ぶ柔軟性もあるはず、との論考も印象的だった。
(講談社・1365円)
 はせがわ・えいすけ 進化生物学者。著書『働かないアリに意義がある』など。
◆もう1冊 
 本川達雄著『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)。動物のサイズから導き出される法則や知見を分かりやすく解説した入門書。
    --「書評:働くアリに幸せを 長谷川 英祐 著」、『東京新聞』2013年11月10日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013111002000175.html:title]


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