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覚え書:「書評:社会の抜け道 古市 憲寿・國分 功一郎 著」、『東京新聞』2013年11月10日(日)付。


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社会の抜け道 古市 憲寿・國分 功一郎 著

2013年11月10日


◆閉塞を破る生活者の視点
[評者]鎌田慧=ルポライター
 二十代後半の社会学者と三十代後半の哲学者による、現代社会についての対話集だ。のっけから、IKEA、新三郷ららシティ、コストコなど、初めて聞く言葉に出会ってたじろいだが、消費文化を象徴するショッピングモールという。若い古市氏が消費文化に肯定的で、年かさの國分氏がたしなめるというスタンスで対話が進んでいく。
 ここでは消費社会から反原発デモまで語られているのだが、社会現象にたいして、直線的なアンチではなく、第三の道を探っていく方法が、「抜け道を探す」という表現になっている。「完璧なシステムなどはなく、必ず抜け道がある」。その微視的な発見が大事だ、というのが國分氏の主張である。
 たとえば、小平市の道路建設反対運動について、「住民の意見が計画に反映されていない」という市民の主張が評価されている。住民主権という自治体の精神に拠(よ)って立つならば、行政側の一方的な「計画」などは認められない。それが反対運動の論理となる。
 いま過剰な消費社会となって、「心の豊かさ」が求められるようになった。国分氏が沖縄の生活を例にあげているように、所得水準の低さが、必ずしも生活水準の低さを示すわけではない。「豊かさ」の旗を掲げて「開発」と「支配」が地域に侵攻したのだが(たとえば原発)、これに対置する沖縄の論理が「逆格差論」(岸本建男元名護市長)だった。消費者ではない、生活者の抵抗である。
 日本人の依存体質と裏腹にある「ガラッと変える」一揆主義への期待に対して、國分氏は自分たちの身のまわりのことは自分たちで決めなければいけない、そうでなければ、物事を変える想像力が働かない、とする北欧の教育を紹介している。
 地域における保育園の役割の考察などは、若い世代らしい視点である。閉塞(へいそく)とはいえ、鉄壁に囲まれているわけではない。政治へのさまざまな参加、抜け道探しの入門書である。
(小学館・1785円)
 ふるいち・のりとし 社会学者。
こくぶん・こういちろう 哲学者。
◆もう1冊 
 浅野智彦著『「若者」とは誰か』(河出ブックス)。若者たちが自分を探求してきたさまざまな現象と、大人たちの対応を描き出す。
    --「書評:社会の抜け道 古市 憲寿・國分 功一郎 著」、『東京新聞』2013年11月10日(日)付。

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