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覚え書:「今週の本棚・この3冊:三島事件=中島岳志・選」、『毎日新聞』2013年11月10日(日)付。


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今週の本棚・この3冊:三島事件=中島岳志・選
毎日新聞 2013年11月10日 東京朝刊

 <1>三島由紀夫と楯の会事件(保阪正康著/角川文庫/品切れ)

 <2>証言 三島由紀夫・福田恆存 たった一度の対決(持丸博、佐藤松男著/文藝春秋/1700円)

 <3>火群(ほむら)のゆくへ-元楯の会会員たちの心の軌跡(鈴木亜繪美著、田村司監修/柏艪舎/1785円)

 1970年11月25日、三島由紀夫と楯の会メンバーが自衛隊市ケ谷駐屯地で東部方面総監を監禁し、割腹自殺を図った。あれから43年。三島が訴えた憲法改正が具体的な政治イシューとして取り上げられている。三島は何故(なぜ)に自衛隊に決起を促し、憲法改正を主張して自決したのか。三島事件の概要を知るためには<1>が適している。楯の会が結成される過程で重要な役割を果たしたのは、民族派雑誌『論争ジャーナル』メンバーと日本学生同盟(日学同)である。全共闘運動の全盛期に左翼勢力に対抗する若者グループとして結成された両者は、楯の会メンバーの人材供給源となった。保阪は、事件を三島の文学性や思想に還元せず、楯の会メンバーとの相互関係に注目しながら、事実を丁寧に追う。

 <2>の著者の一人である持丸は、日学同を組織し、『論争ジャーナル』副編集長を務めたキーマンで、楯の会結成時には初代学生長に就任した。三島事件を考察する際の最重要人物の一人だが、今年9月に鬼籍に入った。<2>は持丸が残した貴重な証言録となっている。持丸は楯の会の中核メンバーとして三島に信頼されたが、事件の約1年前に脱会した。三島の構想は、学生運動の騒乱の中で自衛隊が治安出動し、楯の会が先導する形でクーデターに持ち込むというものだった。自衛隊が国軍としての地位を獲得すると、隊員は軍人としての使命に目覚め、日本精神が復興する。それが三島の描いたシナリオだった。

 しかし、自衛隊の治安出動は実現しなかった。69年10月21日の左翼による国際反戦デー闘争は、警察の圧倒的優勢の中で鎮圧され、クーデター構想は幻と化した。持丸は、この時点で「楯の会は本来の意味でその役割を終えた」と主張する。そして、この日以降、三島は先鋭化し、「状況対応型から、自らが状況を作り出す戦略に傾斜して」いったという。持丸が楯の会を脱会した理由として、国体観の違いを挙げている点も興味深い。三島は2・26事件を高く評価し、昭和天皇による鎮圧命令を批判した。しかし、持丸は、「承詔必謹」(天皇の大御心(おおみこころ)を謹んで承ること)の立場から、三島の議論を退けた。楯の会を三島に還元せず、その多様な主体を分析しなければ、事件の真相には迫れないだろう。

 <3>は楯の会メンバーへのインタビューを重ね、事件を多角的・立体的に捉えなおそうとする。関係者の高齢化が進む中、オーラルヒストリーの重要性に改めて気づかされる。
    --「今週の本棚・この3冊:三島事件=中島岳志・選」、『毎日新聞』2013年11月10日(日)付。

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