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日記:南原繁研究会第10回シンポジウム 三谷太一郎講演『南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場』を拝聴して。


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twのまとめですが、記録として残しておきます。

南原繁研究会第10回シンポジウム 三谷太一郎講演『南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場』を拝聴して。本講演は、第一次世界大戦後に高まる国際政治学への関心という歴史的文脈に南原繁の足跡を位置づけ、哲学による「国際政治学序説」(1924)を翠点とし、その意義(副題)を確認するもの。

(問題は多いけれども)ベルサイユ体制は、パワーゲーム至上主義から国際協調主義への歴史的転換となる。その中で各国において「国際政治学」の必要性が唱えられた。本邦では実証主義的な蝋山政道をその嚆矢と見ることがきるが、全く対照的な非実証的=哲学的アプローチを試みたのが南原繁である。

1924年11月に開講した南原繁の特別講義「国際政治学序説」は、講座担当を嘱望され、欧州へ渡った南原の研鑽を披露すべきものだが、南原が最も力を注いだのは、三批判書をはじめとするカント哲学の研究。そこでカントの政治哲学をその国際政治論との関連から明らかにすることになった。

特別講義は、後に「カントに於ける国際政治の理念」(1927年、『国家と宗教』に所収)に結実するが、南原は、道徳上(価値論)では「徳と幸福との綜合」とされる「最高善」を、政治上(政治学)では「正義と安寧の結合」と読み解いていく。前者に後者が従属するが、二律背反の解消は必要とされる。

南原は政治上の最高善を永久平和と措定するが「『永久~』は政治が義務と法の原理によって規律せられ、これと調和するに人類の安寧・福祉の綜合せられたものとして、まさに実践理性の意欲の総体である」と規定される。優越は正義にあるが安寧を無視し得ない。ここに理想的立場と現実的立場の統合がある。

この世に実現すべき「理想」と、ぐだぐだな「現実」は南原繁においてはどこまでもパラレルなものではない。相互に批判的に向き合うことによって綜合されるべきのでなければならない。その道程として浮かび上がるのが太平洋戦争の終戦工作であり、戦後の全面講和論である。

ざっくりとした内容は先の通りですが、個人的に関心を持ったのは、南原が正義の優越を強調した(しながらも「安寧」の重要性を無視しなかった訳ですが)契機には、内村鑑三の日清戦争における義戦論の認識と構造があったという指摘(もちろん、その後の言説転回も含めて)。

なれ合いの欺瞞より正義を尊ぶ内村鑑三のjustification for war/righteous of warは国家益に介在されないことで担保される上位概念(ただし日本近代史はそれを裏切る)。その姿に南原繁の「正義」優先の基礎がある。

勿論、内村の楽天的正義感は領域制国民国家に「過ぎない」ものによって裏切られるし、内村は反省のうえ、議論を転換し、最後は再臨運動へ至る。ただ、理想主義的なるものを掲げつつ現実を批判し、現実から理想的なるものを着地させようとの努力の系譜は南原繁に受け継がれたといってよいのではないか。

以後、私見)内村鑑三のデッドコピーを矢内原忠雄に見出すとすれば、そのプラトンに対するアリストテレス的受容と展開は南原繁なのではないか、という点。両者の厳格/寛容さの違いにその匂いを感じることはできるが、在家であろうとする南原にはその苦渋と苦闘と実践の責任が感じられる。

理想を理想として高く掲げ保ち奉り、そこに容喙されたくないのは人の常だ。しかし、それを後生大事に保ち奉ることでそれが実現されるのかと誰何すれば難しいものがある。その意味で、洞窟の賢者・南原繁は、プラトン的というよりアリストテレス的というのが僕の実感だな。そこに公共性がある。

加えて、内村鑑三の日清戦争義戦論から日露戦争での不戦論までは人口に膾炙された通りの見本の如く解釈が定番化している。しかし、それは不戦論そのものも退けてしまう再臨運動を視野に入れない限りそのダイナミズムは理解できないのではないかという話。ここに内村の公共性もあるのではないかと。

実際のところ、僕自身は内村鑑三を尊敬して止まないけれども、どこかに「苦手」なところがある。まぶしすぎるというか、「苦味」が効き過ぎているというか。しかし、まさにその理想主義をどのように地の国とすりあわせていくのか、つうのは、南原がそうであったように弟子の課題なんだろうなあ、と。

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