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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 代議制民主主義への不信=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年12月25日(水)付。

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くらしの明日
私の社会保障論
代議制民主主義への不信
政治の暴走と国会弱体化
湯浅誠 社会活動家

 「決められない政治」と揶揄されていたのが遠い昔のようだ。今年はずいぶんと「政治の暴走」がやり玉に挙がった。
 国会のねじれが解消し、良くも悪くも「安定した政治」が実現した。国会における法案の成立率は高くなった。しかし、国会の権威が回復したようには見えない。
 背景の一つは「民意とのねじれ」だ。昨年の衆院選(選挙区)で自民党は約4割の得票率で8割の議席を得た。投票率を6割と考えれば、自民党は全有権者の4分の1の「民意」で国会の圧倒的多数を占めたことになる。小選挙区制ではわずかな得票率の差が、大きな議席獲得率の差となって表れる。国会の多数派が国民の多数派とは限らない。
 もう一つは、政府(行政)、司法と国会の関係に変化が出ていることだ。「安倍1強体制」と言われる官邸主導の下、国会や政党の力が低下した。特定秘密保護法案では、国会による政府の監視機能を弱めるような法律を国会が自ら成立させてしまった。
 政府と自民党の関係も「政高党低」に。かつて社会保障や農業政策で絶大な力を持っていた自民党政調が弱体化し、官邸に意見できなくなった。
 司法も、国会に対して強い態度に出た。1票の格差をめぐっては「違憲状態」との指摘にとどまったが、最高裁では婚外子の相続差別を違憲としたり、性同一性障害で性別変更した夫とその妻の間に人工授精で生まれた子の親子関係を認めたりする判決が相次いだ。国会の自浄作用を見限ったような判決だ。
 私は「政治不信の質的深化」を指摘してきた。政治不信の対象が、個々の政治家や政党から、代議制民主主義というシステム自体に向かっているのではないか、と考えたのだ。
 立法・行政・司法による三権分立のパワーバランスが変化し、「国権の最高機関」(憲法41条)であるはずの国会が弱体化した。「決められない政治」は解消したが、代議制民主主義はより深いところで掘り崩されている、とみることもできる。
 戦前のように、軍部が国会のコントロールから果てしなく逸脱していくような事態は起こらないだろう。しかし、国民の代表たる国会が弱体化するということは、つまり、民意が軽視されるということだ。
 私たちは「民意と乖離した国会」を批判するのに忙しい。しかしその結果、国会がさらに弱体化すれば、それは私たちが自分で自分の首を絞める結果をももたらしかねないということを、そろそろ真剣に考えるべきなのではないかと思う。
 「歴史」は常に後ろから振り返るものだが、同時に、そこからの知見を未来に投影するためのものでもある。
ことば 決められる政治
8日に閉会した臨時国会で、政府提出法案の成立率は87%だった。国家安全保障会議(日本版NSC)設置法、特定秘密保護法など、国の将来を左右する重要な法律が次々と成立した。だが、内実は数に任せた強行採決の連発。国会終盤の「駆け込み採決」も相次いだ。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 代議制民主主義への不信=湯浅誠」、『毎日新聞』2013年12月25日(水)付。

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