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覚え書:「書評:日米同盟と原発 中日新聞社会部 編」、『東京新聞』2013年12月8日(日)付。


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日米同盟と原発 中日新聞社会部 編 

2013年12月8日


◆核への欲望 隠される事実
[評者]山岡淳一郎=ノンフィクション作家
 権力者は電力供給と核抑止という二枚のカードを求めて原発を欲しがる。しかし、その本心を明かせば平和を望む国民の支持を失う。そこで彼らは原子力と軍事の一体性に関わる「情報」を隠し、操作してきた。
 遡(さかのぼ)れば、戦争中、軍部から物理学者の仁科芳雄らへの原爆製造の要請にいきつく。日本は原爆を開発できず、逆に投下される。内閣や軍部は「国民がおびえ、戦意を失う」と事実を隠した。敗戦後、日本を支配した連合国軍総司令部(GHQ)もまた「原爆の効果」がソ連側に知られるのを警戒し、被害の調査データを秘匿した。
 本書は、そうした事実を丁寧に掘り起こし、貴重な証言を集めている。唯一の被爆国である日本が「原子力の平和利用」の名のもとに原発大国へと変貌する過程を記した好著といえよう。
 私が注目したのは、国際政治学者の若泉敬が一九六四年一二月、首相直轄の内閣調査室(現・内閣情報調査室)に出した「中共の核実験と日本の安全保障」という報告書だ。冷戦下、中国の核実験に驚いた内調は極秘裏に核保有の可能性について研究を始める。意見を求められた若泉は、「自ら核武装はしない国是を貫くべきである」としつつ、「十分その能力はあるが、自らの信念に従ってやらないだけ」との意思を国内外に示せ、と述べた。
 つまり米国の核の傘の下、非核三原則を守りながら、原子力の平和利用=原発開発で「能力」を保つ。「潜在的核抑止論」を明示したのである。 
 政府は、福島第一原発事故を経験した現在も、この考え方を墨守する。冷戦構造は崩れ、大量のプルトニウムを保有しながら、原発を手放さない。さらには海外に原発を売り込む。原発と安全保障の関係はますます重要になってきたのだが、肝心の「情報」が秘密保護法で遮られかねない時代に入った。これから私たちは歴史の重さを嫌というほど噛(か)みしめねばなるまい。
(東京新聞・1680円)
 取材・執筆は寺本政司記者をキャップに8人が担当。
◆もう1冊 
 武田徹著『私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論』(中公新書ラクレ)。被爆国が原発大国になった歴史を検証。
    --「書評:日米同盟と原発 中日新聞社会部 編」、『東京新聞』2013年12月8日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013120802000183.html:title]

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