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覚え書:「書評:辞書の仕事 増井 元 著」、『東京新聞』2013年12月8日(日)付。

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辞書の仕事 増井 元 著

2013年12月8日


◆鬱屈、憤懣にじむ実像
[評者]武藤康史=評論家
 国語辞典の編集部にはずいぶんいろんな電話がかかって来るものらしい。AとB、どちらの言い方が正しいのか? テレビで言っているこのことば遣いは正しいか? なぜこんな語を載せたのだ? うちの子がテストで辞典通りに書いたらバツをもらったぞ! …というような。さぞかし仕事の邪魔だったろう。
 著者は岩波書店で『広辞苑』『岩波国語辞典』などに三十年以上かかわり、五年前に退任した人である。退職した編集者が在社時の思い出話を同じ出版社から出すというのはちょっと珍しい。元の職場に遠慮して筆がちぢこまる、なんてことがないのも立派だ。
 正しい日本語なるものを求める読者のことを《そのような深い信仰心を持つ方》と皮肉たっぷりに表現したり、厳密な定義を欲しがる人を《厳密屋さん》と呼んでみたり…。在職中は言いたくても言えなかったことを、ぞんぶんに吐き出しているのかもしれない。
 辞書編纂(へんさん)のさまざまな局面をていねいに説いた辞書学の教科書と言いたくなるような本でもあるが、おりおりにじみ出る鬱屈(うっくつ)や憤懣(ふんまん)もまた味わうに足る。
 「辞典編集者になりますか」という章があり、その適性や実像が書いてある。ここはもしかしたら小説(および映画)『舟を編む』における辞典編集者像に苦笑しつつ書いたところか…と想像した。
 (岩波新書・798円)
 ますい・はじめ 1945年生まれ。岩波書店の元編集者。
◆もう1冊 
 永江朗著『広辞苑の中の掘り出し日本語』(バジリコ)。誤解していた言葉など、辞書を読む楽しさを語るエッセー。
    --「書評:辞書の仕事 増井 元 著」、『東京新聞』2013年12月8日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013120802000182.html:title]

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