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覚え書:「仏有料ネット新聞:躍進 『公の利益』視点に報道の原点貫く」、『毎日新聞』2014年01月06日(月)付。


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仏有料ネット新聞:躍進 「公の利益」視点に報道の原点貫く
毎日新聞 2014年01月06日 東京朝刊

 2008年にフランスで設立された広告を一切載せない有料のネット新聞「メディアパート」が読者数を伸ばしている。サルコジ前大統領に絡む不正献金疑惑など、数多くのスクープで注目を集める同紙のエドウィー・プレネル代表(61)に、目指すジャーナリズム像などを聞いた。【聞き手・後藤由耶】

 --設立のきっかけは?

 フランスは10%台の高い失業率など経済危機の中で、経営難のためにほとんどの新聞社が大資本グループに買収されている。新聞社に対する政府の補助金への過度の依存という問題も起きている。ジャーナリズムは独立性、信頼性の喪失に直面しており、この中で独立したメディアを再建することが、私たちの第1の目的だった。

 2番目の目的は「デジタル革命」への対応。ネット上の無料ニュースは、既存の活字メディアには衝撃的だった。しかし、流れは後戻りしないものと捉え、誰もが情報発信できる状況の中で、職業ジャーナリズムの最良の部分を再生したいと思った。

 --広告を排除した有料ネット新聞を選択した理由は?

 「質の高い情報には対価が必要」という信念から有料にした。「無料」は広告収入への依存を意味し、娯楽性や大衆性に流されざるを得ない。「質が高く、オリジナリティーがあり、裏付けがしっかりしていれば、読者は購読料を払ってくれるはずだ」と考えた。設立から2年半で何とか採算ラインに乗り、3年前から黒字に転じた。

 --他の新聞にない特徴は?

 「読者参加型新聞」だ。サイト上には読者の誰もが投稿し、意見を書き込めるコーナーを設けている。記事が批判される長文の投稿もあれば、記事を補完してくれる意見もある。民主的な議論の場で、差別発言など編集方針に反しない限り介入しない。意見を表明する権利は、ジャーナリズムの特権ではなく、誰にでも与えられた権利だ。

 --会社の体制は?

 運転資金500万ユーロ(約7億円)を集め、記者25人、ネットや会員管理の職員2人で始めた。ネット新聞だからといって低賃金、不安定雇用であってはならず、平均月給はフランスの新聞社の平均を少し上回っている。現在の社員数は49人(記者は31人、他は技術スタッフや営業)だ。

 --編集方針は?

 私たちは全国紙。全国ニュースや国際ニュースをカバーしている。読者は、他の媒体から既に多くの情報を入手しているので、私たちの役割は特に重要だと思われる出来事を取捨選択し、読者に伝えること。現代の問題は情報が足りないことではなく、あふれかえっていることだ。情報に振り回されれば、大事な問題を見失ってしまう。取捨選択し、優先順位をつけ、ルポや分析によって掘り下げるジャーナリズム本来の仕事が重要になっている。

 記事に重要なのは、自由で自立的な市民となるために不可欠な情報、つまり「公の利益」という視点だ。他社と横並び式に報道するのではなく、独特のアングル、厳密な裏付けなどを通じ、内容を掘り下げていく必要がある。職業ジャーナリズムの存在価値を守らなければ、未来はない。

 --ネット時代に求められるジャーナリズムとは?

 私たちは民衆のメディアであろうとしている。ジャーナリズムの本来の使命は、権力の乱用を監視することだ。そのためには、権力の側ではなく、市民の側に立つ必要がある。長年全国紙「ルモンド」で働いてきた私は、大手新聞社でこの姿勢を貫くことがいかに困難であるかは、よく知っている。いわばジャーナリズムの原点に立ち返ることにより、この職業が失ってしまった若さとバイタリティーを取り戻そうとしているのだ。

 私たちは、サルコジ前大統領側への不正献金疑惑を報じた。さらに、政権交代後の現在の社会党政権についても、カユザック予算担当相(当時)がスイスに隠し口座を持っている疑惑を報道し、辞任に追い込んだ。私たちは誰の味方でもなく、公の利益と判断すれば、何でも報道する。

 権力批判を続ければ、政党や警察組織に嫌われるかもしれないが、組織内部には疑問を持っている人がいる。「この記者に話せば、決して裏切られない。情報を握りつぶさず、最後まで事件を追及してくれる」。そんな信頼関係を築いていけば、おのずと情報は集まってくる。市民の「知る権利」を守ること。それは民主主義を守る闘いだ。私たちは常に不偏不党であることを大切にしている。

 ◇スキャンダル次々暴く

 メディアパートは、次々と政界スキャンダルを暴いてきた。最も著名なのが、2010年のサルコジ前大統領側への不正献金疑惑。大手化粧品会社「ロレアル」創業者の娘、リリアンヌ・ベタンクール氏から違法な選挙資金を受け取っていたとされ、捜査当局の本格捜査が行われた。

 カユザック予算担当相(当時)を巡る隠し口座疑惑を報じたのは12年。13年3月に裁判所が60万ユーロ(8000万円超)の口座の存在を確認し、パリ検察当局が脱税隠匿、虚偽の資産報告などの疑いで捜査中だ。

 ◇読者要求の受け皿に

 メディアパート成功の理由は何か。

 そもそも仏には日本のような宅配制度がなく、新聞は売店で販売されており、一般家庭での新聞購読はごく一部にとどまる。さらに無料紙の台頭とネットの普及に押され、新聞経営は厳しい。買収が相次ぎ、かつて日刊全国紙で最多部数を誇ったフィガロは2004年、軍需会社のダッソーに買収され、ルモンドは10年、イブ・サンローランの創立者らによる実業家グループの傘下に入った。仏政府は、新聞・雑誌業界約2200社に年間6億8400万ユーロ(約1000億円)を支援しており、報道の中立性が問題になっている。

 仏ジャーナリズム事情に詳しい大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)は「フランスでは『大企業など社会的に強い勢力が新聞を支配している』という認識が広がる一方で、無料紙のニュースも充実しているとは言えなかった。メディアパートは『深い分析記事を読みたい』という一般読者の要求の受け皿になったのではないか」と指摘する。

 一方、日本ではメディアパートのように調査報道を売り物にし、社会的な影響力を持った独立経営によるネット新聞はない。植村八潮・専修大教授(コミュニケーション学)は「日本で新しい新聞の成立が難しい背景には、欧米に比べて新聞の信頼度や、家庭での普及率が高く、新聞社などが提供する以外の、別のメディアによるニュースが受け入れられにくいことがある」と話している。【臺宏士、岡礼子、パリ宮川裕章】

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 ■ことば

 ◇メディアパート

 ルモンドやリベラシオンなどを退社した記者らが設立したネット新聞。記事は毎日朝昼晩の3回更新される。購読者は8万1000人(昨年11月現在)。購読料は月額9ユーロ(約1300円)。収入の95%を購読料が占める。

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 ■人物略歴

 ◇エドウィー・プレネル氏

 週刊誌「ルージュ」などを経て、1980年から全国紙「ルモンド」に移り、編集長も務める。同紙を退社後、2008年に「メディアパート」を設立。
    --「仏有料ネット新聞:躍進 『公の利益』視点に報道の原点貫く」、『毎日新聞』2014年01月06日(月)付。

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コメント

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投稿: Fake Oakleys | 2014年2月 6日 (木) 17時56分

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