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覚え書:「発信箱:丸山真男と北条民雄=小国綾子(夕刊編集部)」、『毎日新聞』2014年01月21日(火)付。


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発信箱:丸山真男と北条民雄=小国綾子(夕刊編集部)
毎日新聞 2014年01月21日

 政治思想史家、丸山真男さん(享年82)の記事を書くため著作を読み進め、ふと気になった。1933年、19歳で治安維持法違反容疑で検挙された丸山さん、激しい特高の取り調べにポロポロと泣き伏した夜のことを65年以降、ある小説の題名にちなんで「留置場での『いのちの初夜』」だったと語るようになった。小説とは、ハンセン病の診断を受けた北条民雄さんが療養施設に入所した最初の夜を描いた「いのちの初夜」。丸山さんはいったいどんな思いで、若き日の勾留体験を小説の題名に重ねたのだろう。

 手がかりを求めて、久しぶりに「いのちの初夜」を読み返した。登場人物は語る。「僕らは不死鳥です。新しい思想、新しい眼(め)を持つ時、全然癩(らい)者の生活を獲得する時、再び人間として生き復(かえ)るのです」。後書きによると、北条さんは小説に描いた一夜のことを「生涯忘れることのできない恐ろしい記憶」だが、そこに立ち戻らなければ「再び立ち上がる道がつかめなかった」と川端康成さんへの手紙に書いたという。丸山さんはこの小説を読んで、勾留体験こそが自分の思想の原点、「初夜」なのだと確信したのではないか。丸山さんの「大日本帝国の実在よりは戦後民主主義の虚妄に賭ける」という思想を支えたのは、19歳で体験した留置場での「初夜」だったのではないか。

 北条さんはこの作品で36年、文学界賞を受賞。翌年、23歳で死んだ。若くして他界した小説家と戦後民主主義のオピニオンリーダー。同じ年に生まれながら接点もなく、生きた時間も異なる二つの人生は、「いのちの初夜」という言葉で今も結ばれ、私たちに多くのことを物語る。2人は今年、生誕100年を迎える。
    --「発信箱:丸山真男と北条民雄=小国綾子(夕刊編集部)」、『毎日新聞』2014年01月21日(火)付。

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ストックすべき記事としての「覚え書」にコメンタリーをつけることには躊躇しますが、少しだけ。

丸山真男と北条民雄が同世代で今年、生誕100年(1914年生まれ)とは見落としていた。治安維持法違反で19歳の丸山眞男は検挙され、北条民雄はその年、ハンセン病を発病し翌年「収監」されている。情報統制と成長の代価としての優生主義が取り戻すべき日本の過去であるとすれば残念なことこのうえない。

ちなみに一高時代の丸山眞男は治安維持法違反で検挙されますが、これは「意識の高い」確信犯ではなく、自宅に出入りし家族同様のつき合いをしていた長谷川如是閑の講演にたまたま立ち寄ったところ、検挙され、思想形成に多大な影響を与えた。その意味ではまさに「いのちの初夜」なのだろう。

丸山眞男と彼が「賭け」ようとした戦後民主主義とは、近代主義者を自認したその姿を急進主義者と復古主義者たちは「揶揄」した。近代とは「超克」されるべきものだから。しかし、日本社会とは、iPhoneで海外とスカイプしながらも、それは外面だけで、内面は前近代ですから、まずそこからですよね。

ここ2年ほど集中して丸山眞男を読んでいるけど(←はやく1本まとめろって話しですが・涙)、丸山はすでに「乗り越えられた」ものではありませんよね。縦横に対象化されることを退けながら、あえて「あまのじゃく」として振る舞う挑発にこそ、丸山に学ぶべき醍醐味はあると思う。

戦前・戦中の「近代の超克」は、まさにアンチ西洋としてその「超克」が模索され、そのウラ返しとして安直な東洋主義としてオプションが容易された。しかし、そもそも近代化されいない訳で、近代を超克しようとするのであれば、その段階を経験しなければつう話しで、なら、民主主義ちゃんとやれよという話が必然される。

アクロバティックな夢想的オプションで乗り越えようとすると絶対に失敗する。それがまさに「超克の原理」。気がついたら工業規格もないまま、総力戦に突入。まあ、これぞ丸山の指摘する「いきおい」というヤツか。丁寧に「来るべき」ものを不断に到来せしめる努力が大事なのにね。

[http://mainichi.jp/opinion/news/20140121k0000m070143000c.html:title]


北条民雄『命の初夜』は青空文庫に収録されています。
[http://www.aozora.gr.jp/cards/000997/card398.html:title]


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コメント

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