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書評:「國分功一郎著『来るべき民主主義』(幻冬舎)」、『第三文明』2014年2月、69頁。


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書評

『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』

國分功一郎・著

幻冬舎新書・819円

民主主義を引き寄せよう!
「参加する社会」の構想

 本書は、哲学者の著者が、小平市都道328号線の反対運動に加わったことをきっかけにして「現在の民主主義を見直し、これからの新しい民主主義について考える」試みだ。近代の政治理論は主権を立法権と定義し、選挙で選ばれた議員たちの熟議(立法府)がすべてを決定すると言われる。しかし、全てが「決まらない」し、民意は反映されないことが多い。だから私たちは苛立(いらだ)ちを覚える。
 民主主義のアリーナとは選挙だけなのか。実は統治に関わるほとんどの事柄は行政が執行する。そして私たちは行政権に全く関わることができないのが現実だ。穴を穿(うが)つ著者の根気強い取り組みは、行政が全部決めるのに民主主義と呼ばれるパラドクスを明らかにし、未来を展望する。
 大切なことはシニシズムを決め込む前に、民主主義の概念とアクセスを一新することだ。著者の提案は極めて具体的だ。「制度が多いほど、人は自由になる」というドゥルーズの言葉から、議会以外のアクセスに注目する。住民投票やワークショップなどその経路は意外にも多い。デリダの「来るべき民主主義」という議論は、システムを絶え間なく改善していくことの必要性を説く。
 代議制民主主義の限界と直接民主主義の可能性を示す本書の議論は、その関わり形を私たちに教えてくれる。民主主義とは出来合の完成品ではなく「来るべき」ものなのだ。一回の革命で全てがバラ色になると夢想するのはやめよう。「来るべき民主主義」とは、不断に関わっていく「未完のプロジェクト」なのである。「何も変わらない」のではない。私たちが「参加する社会」に絶えず更新していかなければ「変わらない」のだ。
 本書は近代政治思想史の優れた入門書といってよいが、著者の実践が思想を生きたものへと転換する。その意味で闘いの軌跡である。「この問題に応えられなければ、自分がやっている学問は嘘だ」--著者の問いかけは、哲学者のみに向けられたものではない。
(東洋哲学研究所委嘱研究員・氏家法雄)
    --拙文「國分功一郎著『来るべき民主主義』(幻冬舎)」、『第三文明』2014年2月、69頁。

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