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日記:有機的知識人としての吉野作造


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知ることから理解することへの移行

 知ることから理解すること、感じることへの移行、あるいはその逆に感じることから理解すること、知ることへの移行。民衆的分子は「感じる」ことはあっても、つねに理解し、知るとはかぎらない。また知識人分子は「知る」ことはあるが、つねに理解することはかぎらないし、とりわけ「感じる」とはかぎらない。……知識人の誤りは、理解することなしに、とりわけ感じることなしに、情熱なしに(知ることそれ自体だけでなく、知る対象にたいしても)知ることができると「信じている」ことにある。……知識人と民衆--国民との、指導者と被指導者、統治者と被統治者との関係は、感情-情熱が理解となり、それゆえに知となるような(機械的ではなく生き生きとしたあり方で)有機的な紐帯がある場合にのみ、代表の関係であり、統治者と被統治者、指導者と被指導者とのあいだに個々の分子的興隆が生じ、このようにしてのみ社会的力としての統合的生活が現実化され「歴史的ブロック」が創造されるのである。
    --アントニオ・グラムシ(松田博訳)「知識人とヘゲモニー『知識人論ノート』注解」、『グラムシ「獄中ノート」著作集』明石書店、第III巻、2013年、80頁。

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遅きに失した感はあるものの、先週からようやくグラムシの『獄中ノート著作集』(明石書店)読み始めました(僕の場合はスピヴァク経由)。今、III巻の「知識人論ノート注解」が終わったところ。しかし、ホント、閃くことが多かった。

グラムシが言う通り、「知識人」を見いだすのは容易だが、それでもなお現代世界においては「非知識人」を発見することははなはだ困難。だれもが何らかのカタチで参与する。その世界で必要なのは「有機的知識人」というあり方なんだけど、これが自分の研究に遠回りながら接続するとは思いもしなかった。

吉野作造は既に「超克」された思想家となっている。しかし、テクストを読み、その足跡をたどると、「超克」なんてされてやいない。では何が吉野のアクチュアリティなのかと言えば、宗教者の社会性(クリスチャンデモクラット)とか民主主義の地下水脈、などと指摘もできるけどどうもすっきりしなかった。

確かに、日本宗教史を振り返ると、宗教者は社会性を喪失し、内部専念へというパターンが多い。信仰に薫発されてその真理実現へと奔走する社会派は結果、信仰を失うパターンが多い。その意味で吉野作造はその両端を排しているから高く評価することができる。民主主義議論もそう。しかし、それだけでない。

その、「それだけではない」というのが何だか分からずひっかかっていた。それがグラムシの著作を読むことで、言葉を与えられ、謎が氷解した。そう、すなわち、吉野作造の思想と実践とは、グラムシが待望した「有機的知識人」のそれなのだと。病院での仕事の休憩中に読み終え、一気にスパークした。

吉野作造が有機的知識人へとなり得た理由は、彼自身が反省できる人間であるということ。青年期吉野は植民地支配を好きではないがやむを得ないものと捉えているが、日本の植民地支配の地域を歩くことで、それを反省・否定し、脱植民地を構想する。転向は偽りの隠蔽だが、吉野は反省して軌道修正できる。

吉野作造が有機的知識人たり得たもうひとつの理由は、やはりそのキリスト教信仰の影響が大きい。吉野のキリスト教信仰の核は、あらゆる政治的イデオロギーから決別することだ(だから、その政治思想は七転八倒するし、脆弱ではある)。しかし、人間に即して社会と人間を変えようとする姿勢は信仰の薫陶によることは言うまでなく(すべての人間は信仰の如何に関わらず「神の子」であるというキリスト教信仰)。

吉野作造はその生前から「乗り越えられた」過去の論者というのが定位置でしょう。しかし、その吉野を「乗り越えた」と自認し、こちらの思想の方が最新だと吹聴した反保守の革新的立場の方が、彼らが嫌悪した保守主義者と同じく「人間」から乖離した徒手空拳だったという話しですね。ほんと。

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コメント

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