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覚え書:「記者の目:『憲法をよむ』を連載して 自民改正草案の危うさ=遠藤孝康(大阪社会部)」、『毎日新聞』2014年02月18日(火)付。


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記者の目:「憲法をよむ」を連載して 自民改正草案の危うさ=遠藤孝康(大阪社会部)
毎日新聞 2014年02月18日 東京朝刊

(写真キャプション)1946年11月3日、皇居前広場で開かれた日本国憲法公布記念の祝賀会。昭和天皇と香淳皇后が出席した


 本紙朝刊で連載中の企画「憲法をよむ」を担当している。中学生の憲太君の質問に「先生」が答える形で、現行憲法と2012年に自民党が発表した憲法改正草案の内容を条文ごとに解説する。18日で46回を数えるが、各条文の意義や背景を知ると、私たちが今手にしている自由や権利が、昔から当たり前にあったものではないことに気付く。

 連載は昨年の憲法改正論議の高まりを受けて始めた。安倍晋三首相は12年末の就任後、憲法改正の手続きを定める第96条の先行改正に繰り返し意欲を示した。改正の賛否を問う国民投票を行うための「憲法改正の発議」に、衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とした条件を緩めるという主張で、昨年5月の憲法記念日を前に賛否が交錯した。

 昨夏の参院選は、改憲勢力が3分の2以上を占めるかが一つの焦点だった。その鍵となった日本維新の会は当時の綱領で「日本を孤立と軽蔑の対象に貶(おとし)め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法」とした。今の憲法はそれほどまでにこき下ろされる内容なのか、各条文を通じて改めて考えたいと思った。

 ◇現行条文伝える戦争の強い反省

 記者になって12年目、恥ずかしながら第9条以外の条文とまともに向き合う機会はなかった。憲法の教科書を手に何人もの学者や弁護士らを訪ね、条文の背景や自民党草案への意見を聞いた。そうして憲法を学ぶ中で感じたことがあった。日本が敗戦に至る過程で、国家が国民の自由や権利を奪い、犠牲を強いたことへの反省が各条文に強く込められているということだ。

 特に基本的人権の尊重を定めた第3章で顕著だった。この章は全体の3分の1にあたる31の条文を使い、個別の権利や自由を一つ一つ丁寧に規定する。思想・良心の自由、信教の自由、言論・表現の自由……。第31条からは他国には例がないほど詳細に身柄を拘束する際の手続きなどを定め、身体の自由を保障している。

 戦前や戦中、言論は厳しく統制された。特定の主義や思想を理由に、手続きさえ踏まない不当な逮捕が相次ぎ、拷問死する人もいた。そうして構築された国家総動員体制の下、日本は戦争へと突き進んだ。だから第11条はこう宣言する。「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」

 ◇個人の自由・権利、簡単に制約懸念

 自民党改正草案はこの第3章に手を入れた。「すべて国民は、個人として尊重される」とした第13条。別々の個性を持った一人一人が大切にされるという憲法の根本理念を示した条文だが、自民党案は「個」を削除した。第36条の拷問の禁止では「絶対に」という言葉を消した。言論・表現の自由を定めた第21条では2項を新設して「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」は認められないと、制約を明記した。

 昨年12月にインタビューした自民党の憲法改正推進本部長の船田元・衆院議員(当時は本部長代行)は、個人の権利が過度に制約されるという懸念に対し、「改正が原因で権利が過度に制約されるという事例が出てくれば、是正措置を取らざるを得ない。またもう一回憲法を直すという柔軟性は持つべきだ。ただ、今そこまで考えるのは早い」と答えた。私は、個人の自由や権利が戦前や戦中のように、権力によって簡単に制約されてしまう事態を恐れるが、そうした懸念は船田氏に伝わっていないように感じた。

 読者から届く手紙には、不安がつづられる。「戦中、『日本が負けるかも』と言ったら逮捕され、投獄されたのを目の当たりにしてきた。嘘(うそ)の教育、報道に信じ込まされる苦い体験の時代がまた来る」(兵庫県の82歳女性)。「自民党案を読んで、まず思ったのは日本国民が半世紀あまりをかけて育ててきた民主主義が壊されようとしているという恐怖心でした」(滋賀県の女性)

 昨年12月、神戸市であった自民党衆院議員と護憲派弁護士による討論集会に足を運んだ。憲法のあり方や自民党草案に対する両者の発言に、約200人の参加者からは拍手が湧き、会場は盛り上がった。自民党は今年、草案への理解を広げるため、全国で対話集会を開く。一方的に草案を宣伝するのではなく、護憲派も交え、市民の前で改正の是非を真正面から討論する場にしてほしい。そうした討論を通じ、戦後70年を前に、日本のあるべき姿を国民に考えてもらい、選んでもらう。それが、国民の厳粛な信託を受け、国政を担う者の責務だと思う。
    --「記者の目:『憲法をよむ』を連載して 自民改正草案の危うさ=遠藤孝康(大阪社会部)」、『毎日新聞』2014年02月18日(火)付。

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