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覚え書:「書評:木下杢太郎を読む日 岡井 隆 著」、『東京新聞』2014年02月23日(日)付。


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木下杢太郎を読む日 岡井 隆 著

2014年2月23日


◆芸域に達する「語り」
[評者]長谷川郁夫=大阪芸術大教授
 木下杢太郎(もくたろう)、「メトロポオルの燈(ひ)が見える」の詩人。皮膚科医で後年は東京帝大医学部教授となる。戯作に熱中し、小説・美術評論、キリシタン史研究に著作があり、好んで絵を描いた。明治末期に耽美派(たんびは)の拠点となる「パンの会」を結成。江戸情調を端唄・俗謡の言葉遊びのように唄って、文学史的には特異なマイナー・ポエットとして知られる。これまで、日夏耿之介(ひなつこうのすけ)、野田宇太郎、澤柳大五郎、富士川英郎、杉山二郎と主にゲルマン語系の学匠、研究者に愛好されてきた。
 著者が早くから森鴎外、斎藤茂吉とともに杢太郎に惹(ひ)かれたのは、自身もまた医者であり歌人であるところからの精神的な血縁意識によるものと考えられる。
 「語り」による独特な著述法は茂吉論以来の久しいスタイルだが、行きつ戻りつの現在進行形を、著者は「一つの生活記録」という。「語り」は本書において一つの「芸」に達した。面白い、のである。
 大正五年に南満医学堂教授となり、詩壇を離れた杢太郎の孤独を、多面体の生理に即して辿(たど)るうちに、著者の机辺に、自殺の危機にまで直面したその「暗い心」が揺らぐ。ホフマンスタールの影響を探って、鴎外と杢太郎の訳文を紹介するその筆の向こうに、世紀末オーストリア詩人の姿が彷彿(ほうふつ)される。作品の読解を中心とする杢太郎・評伝の試みは初めてのものだろう。
 (幻戯書房・3465円)
 おかい・たかし 1928年生まれ。歌人。著書『鴎外・茂吉・杢太郎』など。
◆もう1冊
 木下杢太郎著『新編 百花譜百選』(岩波文庫)。戦時下の最晩年に描いた植物画集。時局や日常を切り取る文章も。
    --「書評:木下杢太郎を読む日 岡井 隆 著」、『東京新聞』2014年02月23日(日)付。

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