書評:加藤哲郎『日本の社会主義 原爆反対・原発推進の論理』岩波書店、2013年。
加藤哲郎『日本の社会主義 原爆反対・原発推進の論理』岩波書店、読了。草創期から現在の「脱原発」運動に至るまで、およそ1世紀に渡る社会主義受容史を辿りながら、推進と反対に揺れ動く「社会主義は、原子力にいかに向き合ってきたのか」問い直す労作。
その嚆矢となる幸徳秋水の社会民主党は社会主義、民主主義、平和主義、国際主義を四大原理として出発したが、「きれいな水爆」「平和利用」の言葉がある通り、四大原理と異なる展開を遂げる。原水爆反対と一体の平和利用言説をどう形成したのか、本書は丁寧に辿る。
白眉は、物理学者・武谷三男の無責任さの追跡と「原子力の平和利用」(中曽根・正力)の収斂であろう。「原水爆に反対しつつも原子力発電にはたちむかえなかった日本の社会主義・平和運動・平和主義思想」(終章)の限界は社会主義受容の限界を予期させる。
科学技術への信仰にも似た楽天性と効率重視の「政治」に籠絡される限り、原子力の欺瞞から自由になることは不可能である。著者は社会主義に当てこすることを目的とはしない。スルーすることこそ言語道断であろう。深い反省に立った出発に新生を展望する。
社会変革論としての社会主義・共産主義を単純に全否定しても始まらない。しかしながら……そしてこれはイデオロギーに関わらない問題だが……、「平和利用」が「政治」優位の虚偽であればこそ、それに対する反省なき時流迎合も「政治」優位の虚偽であろう。間違ったことを認める勇気を選択しない限り、「政治」優位は、その思潮の退潮を必然とする。
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