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書評:片桐庸夫『民間交流のパイオニア 渋沢栄一の国民外交』藤原書店、2013年。

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片桐庸夫『民間交流のパイオニア 渋沢栄一の国民外交』藤原書店、読了。近代日本における資本主義興隆の父・渋沢栄一は、晩年を民間外交に捧げ、「対米・中・韓関係の改善に尽力」(帯)した生涯だったという。本書はその全体像を明らかにする試み。

通商関係の強化こそ平和の礎との渋沢の信念は、日本の侵略主義とは一戦を画し、米・中・韓との関係改善に四半世紀費やした。文化交流から経済支援まで--その多彩な活動は、ノーベル平和賞の候補として取り上げられる等、本調査には驚く。

「論語と算盤」を旨とした渋沢の「国民外交」を明らかにする本書は、同時にその限界をも明らかにする。それは中国・朝鮮半島での民族主義を正確に理解してなかったことだ。国際派といってよい渋沢ですら近代日本の驕りから自由でなかったことだ。
※このあたりが吉野作造とは対照的であり、いわば自民族中心主義……特に近代日本は、アジアで最初に資本主義興隆に成功したという歴史を「自負」ととらえてしまうと、足下をすくわれてしまう訳で、この頸木をどのように理解するかで、その言説が真性か否か、分かるというものでもある。
※ただし、上記の真性論でもってして、全否定するのも問題があるのはいうまでもない。

渋沢が尽力した「対米・中・韓関係の改善」は戦前だけでなく、目下の喫緊の課題でもある。戦前日本のように孤立に突き進むリアリティが増す今日、「政経分離」の建前には限界があるとしても、「民間外交」で切り開く翠点が無いわけではない。アプローチの無謬さをしりぞけながら、よりよき相互理解を目指すうえで、本労作に学ぶべきことは多い。
 

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