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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 防災『その後』にも備えを 地域復興『包摂の論理』で」、『毎日新聞』2014年02月26日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
防災「その後」にも備えを 
地域復興「包摂の論理」で

湯浅誠 社会活動家

 東日本大震災からもうすぐ3年。地震の活動期に入ったと言われる日本列島全域で、防災意識が高まっている。
 防災というと、私たちは「その時」にいかに逃げるか、身を守るかに意識を集中する。家屋の耐震化、家具の転倒防止、避難経路、家族との連絡方法、食料・水の備蓄、どれも重要だ。
 ただ「その時」に集中するあまり、「その後」への備えがお留守になってはいけない。大きな災害が起きれば、避難所生活は数カ月続く。その長い期間を乗り越えるには、災害発生時とは異なる知恵と工夫が必要になる
 例えば、自治会を作る力、運営する力、それぞれの得意分野を集め補強し合う力、住民同士がまとまる力、さまざまなハンディを負った人たちを包摂する力、震災関連死を防ぐ力、孤立死を防ぐ力--といったものだ。
 今回の震災でも、多数の震災関連死が認められ、孤立死も起きている。生き延びるために「その時」の備えをするのであれば、同様に「その後」の備えもしなければ、結果的に生き延びることはできない。
 社長や上司が指示を出してくれるわけではない。ある水準以上の人だけが集まっているわけでもない。同じ「地域」という共通項があるだけで、それ以外はバラバラの、ありとあらゆる人たちが一緒に寝起きする。病気や障害を持つ人もいるだろう。外国籍の方もいるだろう。役所にはもう、避難所に職員を張り付ける人的余裕はない。一言で言うと、地域のありようが問われる。
 今回の震災でも、周囲の理解と対応を得られずに避難所の駐車スペースで寝起きしていた人や、浸水した自宅に戻らざるを得なかった人たちがいた。なかなか自治会を作れず、作っても解散してしまう避難所や仮設団地もあった。集団移転や将来的な復興の絵姿をめぐり、住民の意見がまとまらず、停滞したところもあった。
 復興のプロセスは「民主主義の学校」だ。他者と話し、他者を思いやり、徐々に多数意見を作り上げ、同時に少数意見を尊重し、少しでも納得感の高い合意形成に持っていかなければならない。「排除の論理」ではなく、「包摂の論理」で、地域の復興の担い手を増やしていかなければならない。
 このプロセスを経験した多くの方たちが言うのは「普段やっていなかったことは、できない」ということだ。しかし、同時に「震災を機に、地域のありようを見つめ直した」という声も多い。
 「その後」も含めた、広い意味での「防災」の視点が普及することを願う。

◇東日本大震災から3年 家族が分散したり、終わりの見えない避難生活の中で孤立したりする可能性は誰にでもある。そして、こうしたストレスの矛先は弱い者へ向かう。被災地では子どもたちの問題行動や虐待などの課題が生まれ、震災関連死は昨年9月末現在で2916人となった。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 防災『その後』にも備えを 地域復興『包摂の論理』で」、『毎日新聞』2014年02月26日(水)付。

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