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覚え書:「今週の本棚:中島岳志・評 『転換期の日本へ』=J・W・ダワー、G・マコーマック著」、『毎日新聞』2014年03月02日(日)付。


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今週の本棚:中島岳志・評 『転換期の日本へ』=J・W・ダワー、G・マコーマック著
毎日新聞 2014年03月02日 東京朝刊

 (NHK出版新書・903円)

 ◇「属国」を超える「パックス・アジア」への思想

 著者の二人は、米豪を代表する日本研究者。知日派として知られる。本書は、そんな二人による警告の書である。

 キーワードは「サンフランシスコ体制」と「属国」。この二つが戦後日本を規定して来たという。「サンフランシスコ体制」とは、1951年のサンフランシスコ講和条約に規定された秩序のあり方を示す。ここで日本はアメリカの「属国」となることを宿命づけられた。日本の為政者はアメリカに対して主体的に服従していく。

 マコーマックは「サンフランシスコ体制の本質は不平等」と断言する。日米の共謀で、「二つの日本」が誕生し、沖縄に負担が押し付けられた。周辺諸国との領土問題は、意図的に「未決」状態にされた。将来の紛争の種をあらかじめまいておき、日本政府の共産国家との連携を封じ込めたのである。

 さらに日本の再軍備を後押し、「核の傘」を提供することで、アメリカの戦術計画に組み込んだ。日本の防衛は、アメリカにイニシアティブを握られ続ける。

 「属国」であることの代償は大きい。エリートたちは自国の利益よりも、アメリカの利益を優先する。しかも対米従属派がナショナリストを名乗り、日本の利益を優先すると「反日」と罵倒される。この転倒が、外国人の眼(め)には奇妙なものに映る。

 いま時代は大きく変化している。アメリカの覇権は低下し、中国の台頭が著しい。「パックス・アメリカーナ」は終焉(しゅうえん)の時を迎え、世界の警察としての信用を失っている。

 そんな中、アメリカは中国に対して両義的な態度をとることで、プレゼンスを維持しようとしている。中国を「仮想敵」と捉えながら、一方で中国に接近する。

 日本はアメリカとともに中国を「仮想敵」としたい。だから、アメリカが中国への親密な態度をとると、より一層、尾っぽを振って対米追従を突き進む。そんな自発的服従を続ける日本を、アメリカは軽んじる。中国首脳を歓待し、日本政府を冷遇する。負のループが加速する。

 二人は、安倍政権に対して厳しい意見を投げかける。安倍内閣は法や民主的手続きを軽視し、粗雑なパターナリズムを振りかざしてはいまいか。隣国に対しては独善的な論理で挑発し、歴史的に構築された信義を重んじていないのではないか。安倍首相こそが対米従属という戦後レジームを踏襲しており、自国の自立を遠ざけているのではないか。

 二人は、現在を「パックス・アメリカーナ」から「パックス・アジア」への転換期と捉える。この流れを本物にするためには、日本と中国が連帯しなければならない。日中が手を結べば、新しい時代が到来する。そう彼らは訴える。

 その試金石として「歴史認識」の共有を説くが、これは簡単ではない。むしろ「パックス・アジア」を支えるアジア的存在論・認識論こそが求められているのではないかと私は思う。それは近代合理主義や相対主義を超えるヴィジョンでなければならない。アジア的であることが、近代の超克をなめらかに促す動力でなければならない。私たちに求められているのは、新しいアジア主義の登場である。

 いま必要なのは、アジアの思想的論理を紡ぎ直すことだろう。二人のヴィジョンの上に立ちつつ、その先の近代を見据えることが「パックス・アジア」への道につながる。過去の深遠な思想に遡行(そこう)しつつ、二人の先を歩かなければならない。(明田川融・吉永ふさ子訳)
    --「今週の本棚:中島岳志・評 『転換期の日本へ』=J・W・ダワー、G・マコーマック著」、『毎日新聞』2014年03月02日(日)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140302ddm015070021000c.html:title]

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