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覚え書:「『おネエことば』論 [著]クレア・マリィ [評者]水無田気流(詩人・社会学者)」、『朝日新聞』2014年03月02日(日)付。


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「おネエことば」論 [著]クレア・マリィ
[評者]水無田気流(詩人・社会学者)  [掲載]2014年03月02日   [ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能 

■規範の刷新 いやーン、楽しみ

 今や、メディアを席巻する「おネエ」な人たち。女装していてもいなくても、みな現実の女性を超えた女性らしさを醸し、ときにズバッと辛口コメントをするのが定番だ。彼女たちが駆使する最大の武器、それこそが「おネエことば」である。本書は、その魅力と社会背景に迫った秀作だ。おネエことばは単純な女性の物真似(ものまね)ではなく、日本のメディア特有の言語文化だと筆者は分析する。それは日本語表現の性差を基盤に独自のスタイルを確立し、時代とともに変遷を遂げてきた。
 たとえば1950年代は美輪明宏の「メケメケ」がヒットし、60年代にはピーター(池畑慎之介)が映画『薔薇(ばら)の葬列』の主役に抜擢(ばってき)。70年代はおすぎとピーコの双子キャラが「オカマタレント」として人気を集めた。80年代は「ニューハーフ」が注目され、90年代にはゲイ・ブームが起こり、ドラァグ・クイーンの派手なパフォーマンスも耳目を引くようになった。
 さらに00年前後からは、「メイクオーバー・メディア」の浸透が、彼女たちの活躍を後押しした。これはたとえば、ファッションチェックなど生活の中の何かを改変することにより、個人の幸せを高めるノウハウを伝授する手法のことである。なるほどおネエことばは、従来の性差や価値規範を越境する特質を持つ。それゆえ、旧来の価値規範をユーモアにくるみつつ、華麗に撃破するのに最適な言語だ。
 さらに00年代は、ネット言語の普及とともに、テレビ番組ではテロップが多用されるなど言語の視覚化がなされ、それにともない言語のパロディー化が進んだ。一方、現実の女性のことば遣いは中性化し、女性性のパロディー化もまた進んだ。社会の中性化と、メディアの女性化ならぬおネエ化の同時進行は、極めて興味深い。この現象は現実の価値規範をどれほど、いやどんだけ~刷新していくっていうの。いやーン、楽しみ?
    ◇
 青土社・2100円/Claire Maree メルボルン大学アジアインスティチュート准教授。言語学者。
    --「『おネエことば』論 [著]クレア・マリィ [評者]水無田気流(詩人・社会学者)」、『朝日新聞』2014年03月02日(日)付。

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