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覚え書:「保守と歴史認識:/4 国益守る計算高さを--内田樹・神戸女学院大学名誉教授」、『毎日新聞』2014年03月05日(水)付。


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保守と歴史認識:/4 国益守る計算高さを--内田樹・神戸女学院大学名誉教授
毎日新聞 2014年03月05日 東京朝刊

(写真キャプション)内田樹・神戸女学院大名誉教授=竹内紀臣撮影


 --中国、韓国との関係改善が進まず、米国も懸念しています。

 ◆長い歴史がある隣国であり、これからも100年、200年にわたってつきあっていかなければならないという発想が欠けている。安倍政権は外交を市場における競合他社とのシェア争いと同じように考えているのではないか。中国や韓国との領土の取り合いと経済競争におけるシェアの取り合いは次元の違う話だということを理解できていないように見える。

 昨年12月の靖国神社の参拝も、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移転先の名護市辺野古の埋め立てについて沖縄県知事との話し合いがついた直後に行われた。米国に貸しを作ったので、今度は米国が嫌がることもできる権利が発生したと考えたのだろう。米国を市場における取引相手のように見る、その実のなさが米国を不安にさせ、いら立たせている。

 --なぜ短期的な発想になるのですか。

 ◆民主制は政策決定にむやみに時間がかかる。時間がかかるかわりに集団全員が決定したことの責任を引き受けなければならない。政策決定が失敗した場合でも、誰かに責任を押しつけることができない。それが民主制の唯一の利点だということを首相はたぶん理解していない。

 そのような政権運営を可能にしているのは国民的規模での反知性主義の広がりだ。教養とは一言で言えば、他者の内側に入り込み、他者として考え、感じ、生きる経験を積むことだ。死者や異邦人や未来の人間たち、自分とは世界観も価値観も生活のしかたも違う他者の内側に入り込んで、そこから世界を眺め、世界を生きる想像力こそが教養の本質だ。そのような能力を評価する文化が今の日本社会にはなくなっている。

 --ただ、中国も韓国も理解するには難しい国です。

 ◆どこの国のリーダーも立場上言わなければいけないことを言っているだけで、自分の本音は口にできない。その切ない事情をお互いに理解し合うリーダー同士の「目配せ」のようなものが外交の手詰まりを切り開く。相手の事情に共感するためには、一度自分の立場を離れて、中立的な立場から事態を見渡して議論することが必要だ。先方の言い分にもそれなりの理があるということを相互に認め合うことでしか外交の停滞は終わらない。

 --外交において相手に譲るのは難しいことです。

 ◆外交でも内政でも、敵対する隣国や野党に日ごろから貸しを作っておいて、ここ一番の時にそれを回収できる政治家が必要だ。見通しの遠い政治家は、譲れぬ国益を守り切るためには、譲れるものは譲っておくという気遣いができる。多少筋を曲げても国益が最終的に守れるなら、筋なんか曲げても構わないという腹のくくり方ができる。

 大きな収穫を回収するためにはまず先に自分から譲ってみせる。そういうリアリズム、計算高さ、本当の意味でのずるさが保守の知恵だったはずだ。それが失われている。最終的に国益を守り切れるのが「強いリーダー」であり、それは「強がるリーダー」とは別のものだ。【聞き手・須藤孝】=つづく

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 ■人物略歴

 ◇うちだ・たつる

 1950年生まれ。東京都立大学大学院博士課程中退。多田塾甲南合気会師範。著書に「街場の憂国論」など。
    --「保守と歴史認識:/4 国益守る計算高さを--内田樹・神戸女学院大学名誉教授」、『毎日新聞』2014年03月05日(水)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140305ddm005010079000c.html:title]

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