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覚え書:「記者の目:東日本大震災3年 福島原発廃炉の現場=前谷宏(東京社会部)」、『毎日新聞』2014年03月06日(木)付。

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記者の目:東日本大震災3年 福島原発廃炉の現場=前谷宏(東京社会部)
毎日新聞 2014年03月06日 東京朝刊


(写真キャプション)汚染水をためるタンクを建設する防護服姿の作業員ら=福島県大熊町の東京電力福島第1原発で2014年2月26日、代表撮影

 ◇作業員支援、社会全体で

 東京電力福島第1原発事故から間もなく3年。廃炉作業の現場では、今でもタンクからの汚染水漏えいや原子炉内の温度計の破損など、人為的ミスが原因とみられるトラブルが絶えない。一線で働く作業員の地位向上や待遇改善を実現しないと、いずれまた取り返しのつかないトラブルが起こるのではないか。構内で働く作業員や業者の取材を続けながら、そう感じている。

 「家族で暮らすささやかな幸せも奪われ、構内で働くことへの十分な対価も支払われない」。昨年12月、会ったこともない私からの電話取材に応じてくれた作業員が、おえつを漏らした。自宅は避難区域にあり、事故前から福島第1原発で働いていた。子供の通学の関係もあり、家族が3カ所に分かれて避難している。生活費がかさみ「ぎりぎりの生活」を続けているという。

 ベテラン作業員の多くは地元の住民だ。事故で避難を余儀なくされた被害者でもある。取材で改めてその事実を痛感させられた。彼らの多くは家族と離れて原発の近くに残るか、片道数時間をかけて避難先から通勤することを余儀なくされている。家族に心配をかけないよう、構内で働いていることを秘密にしている作業員もいるという。

 ◇低賃金が招いたベテランの流出

 同時に多くの作業員が不満を漏らすのが賃金の問題だ。原発構内の作業は多重の下請け構造に支えられており、発注段階で東電が支払う労務費が、中間業者によって管理費などの名目で「中抜き」されてしまうという。「高い線量の中で働かされているのに事故前と比べて1日数百円しか給料が上がっていない」という声も聞いた。

 こうした環境の中で、地元出身のベテラン作業員の流出が続いている。東電によると、作業員の地元出身者の割合は一昨年は60~70%台で推移していたが、昨年は50%台にまで低下。5年で100ミリシーベルトという法定被ばく限度を超え、現場で働けなくなった作業員も多いが、比較的日当の高い周辺の除染作業や首都圏の建設現場に作業員が流出する現象も起こっている。

 東電側も危機感を抱いている。昨年10月28日には相沢善吾副社長が記者会見で「(作業員の確保に)中長期的には心配がある」と発言。その11日後には、12月契約分の工事から発注段階での1人当たりの労務費を1日1万円増額すると発表した。

 だが、この効果が表れているとは言い難い。地元で長年構内作業を請け負う電気工事業者は「末端業者に支払われる額は上がっていない」と証言した。作業員の一人も「賃金が上がっているのは一部の良心的な企業だけ。作業員の多くは日当が変わらず、不公平感が増している」と訴える。東電は「増額分を賃金改善に反映するようお願いする」としているが、元請け企業と交わす契約書に作業員の賃上げを明記するような実効性のある対策が必要ではないか。

 ◇担い手不足切実、教育態勢整わず

 第1原発では今も原子炉建屋に地下水が流入し、汚染水が増え続けている。安倍晋三首相は昨年9月の国際オリンピック委員会総会で「状況はコントロールされている」と話したが、取材した20人近い作業員や業者の中で、この発言に同意した人はいない。1~3号機では炉内の状況すら分からず、メルトダウンした燃料をどうやって取り出すかもはっきりしていない。

 作業員の質の低下も指摘されている。元作業員は「みんな見よう見まねで作業していた」と証言した。新しい作業員を教育する態勢が必要だが、余計な被ばくを避けるため、現場で十分な指導をする態勢が組めないでいるという。

 福島県いわき市の元東電社員、吉川彰浩さん(33)は、外部から廃炉作業への支援を訴える必要があると考えて2012年6月に退職し、作業員の支援活動に取り組む。「日本社会の安全を守るために廃炉は絶対に必要なのに、作業員は待遇も悪い中で働かされており、名誉もない。このままでは新たな担い手がいなくなる」と危惧する。

 福島県外には、原発事故はもう終わったことと感じている人もいるかもしれない。だが、現場では今でも綱渡りのような収束作業が続いている。事故直後から構内で働く作業員の一人は「せめてメダルの一つでももらいたい」と苦笑した。国や東電、元請け企業が作業員の待遇改善に取り組むのは当然だ。一方で、40年続くという廃炉作業の担い手を支えていくために何ができるのか、社会全体で考えていくことが必要だと思う。
    --「記者の目:東日本大震災3年 福島原発廃炉の現場=前谷宏(東京社会部)」、『毎日新聞』2014年03月06日(木)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140306ddm005070019000c.html:title]

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