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覚え書:「書評:ソウル・フラワー・ユニオン 解き放つ唄の轍 石田 昌隆 著」、『東京新聞』2014年03月09日(日)付。


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ソウル・フラワー・ユニオン 解き放つ唄の轍 石田 昌隆 著

2014年3月9日


◆闇から生まれる魂の音楽
[評者]平井玄=音楽評論家
 「ソウル・フラワー・ユニオン」はビリっと舌を刺す凄(すご)みのある中川敬の声をベースに、パンクから始まり、ファンク、アイリッシュ、沖縄、コリアン、チンドンなどなど、地面から湧き出る音の群れをじっくり煮込んできた「闇鍋バンド」である。彼ら、彼女らを親しく撮ってきた写真家がつづる本書は、この二十年間にたどられた音の旅を記したダイアリーだ。写真家自身も鍋に放り込まれて美味(おい)しく煮上がっていくプロセスと誠実さが、そこにある。読む者を、うまい物を喰(く)った気分にさせるいい本である。
 読みながら出てくる曲のYouTube音源を漁(あさ)りまくった。阪神大震災の神戸長田での避難所ライブ、大阪釜ケ崎の越冬祭り、アイルランド音楽人との競演、東ティモールの独立祭、沖縄辺野古でのフェス、東北被災地への出前演奏の旅など、ネット上にたくさんある。人生の後半に入った自分がいかに音から遠ざかっていたかを思い知らされた。このバンドの動きを通じて、rebel(叛逆(はんぎゃく))にして腹の底からの歓(よろこ)びである「唄」の太い流れが浮かぶのである。
 ダブリンの石畳の細い道が交差するテンプルバーで、写真家は「音楽はしっとりとした深い暗闇の中から生まれてくるものではないか」と呟(つぶや)く。釜ケ崎界隈(かいわい)をめぐり歩いて、「このあたりで写真を撮るには<覚悟>か<根拠>、いずれかが必要である」と書き留める。
 体を深く遠くまで流れ行く音と、一瞬にして分厚い時間を切り出す写真。こういう言葉は、両者が手を握り合う貴重な秋(とき)があったことを思わせるに充分(じゅうぶん)である。
 人を蔑(さげすみ)み、国家にぬかずく音楽が蔓延(まんえん)しはじめた。レゲエでいう「バビロン」という言い方が日に日にふさわしくなるこの国で、人が怒号ではなく「声」そのものに飢えているのは間違いない。例えば、被曝(ひばく)労働者たちが被るマスクの内側にまで届く唄を「魂と花のユニオン」とともに歌えたら、と思う。
 (河出書房新社・2520円)
 いしだ・まさたか 1958年生まれ。音楽写真家。著書『黒いグルーヴ』など。
◆もう1冊
 佐々木敦著『シチュエーションズ』(文芸春秋)。3・11以後の社会状況に小説家、芸術家らがどう向き合って活動したかを検証。
    --「書評:ソウル・フラワー・ユニオン 解き放つ唄の轍 石田 昌隆 著」、『東京新聞』2014年03月09日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014030902000178.html:title]

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