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覚え書:「書評:賃上げはなぜ必要か 脇田 成 著」、『東京新聞』2014年03月16日(日)付。


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賃上げはなぜ必要か 脇田 成 著

2014年3月16日


◆低賃金を許す労組の存在
[評者]根井雅弘=京都大教授
 アベノミクスによってデフレは解消し、本当に景気は回復するのだろうか。大胆な金融緩和によって一時円安や株高になったが、たとえインフレ目標に近づいたとしても、賃金が上がらなければ購買力もなく国民の生活も改善しないのではないだろうか。
 本書は、気鋭のマクロ経済学者がこのようなホットな経済問題を考えるための理論的基礎を丁寧に解説し、日本経済の現状と診断の両方を提示した好著である。
 著者は、日本経済の現状は、基本的には有効需要の不足によって資源が十分に活用されていないという意味で「ケインズ的状況」だと診断する。しかし、財政出動のような従来型のケインズ政策はなかなか効果が出ない。
 その理由の一つとして、著者は、リーマン・ショック後の日本企業が「金融危機対策モード」(銀行への借金を返済し、自己資本比率を高めることと、日本企業の共同体的な性格ゆえに労働組合が賃金低下を許容したこと)から抜けきれず、マクロ経済が失速していることに注目する。
 人件費を節約し、企業の内部留保がたまっても、内需はしぼむばかりである。賃金増大が必要なゆえんである。
 もう一つは「少子化」である。出生率の低下は将来の消費マインドや資産価格にマイナスの影響を及ぼすが、著者は、例えば出生率の相対的に高い地方への所得再分配にもなる児童手当が世間で不評なことに驚きを隠さない。
 本書のメッセージを一言でいえば、「企業に賃上げを促し、粛々と少子化対策を打てば良い」ということだ。もちろん本書の主張とは反対に、人口と経済成長の間に直接的な関係はなく、イノベーション(技術や経営方式の革新)のほうが重要であると主張するマクロ経済学者もいることは事実だ。しかし、マクロ経済が失速している理由について、日本企業の共同体的な性格にまで踏み込んで論じている試みはユニークであり、一読を薦めたい。
 (筑摩選書・1890円)
 わきた・しげる 1961年生まれ。経済学者。著書『ナビゲート!日本経済』。
◆もう1冊 
 金子良事著『日本の賃金を歴史から考える』(旬報社)。賃金についての考え方がどのように変わってきたかを時代背景とともに解説。
    --「書評:賃上げはなぜ必要か 脇田 成 著」、『東京新聞』2014年03月16日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014031602000180.html:title]

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