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覚え書:「今週の本棚・本と人:『英子の森』 著者・松田青子さん」、『毎日新聞』2014年03月16日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『英子の森』 著者・松田青子さん
毎日新聞 2014年03月16日 東京朝刊


 (河出書房新社・1575円)

 ◇無意味な仕事を超える場所で--松田青子(まつだ・あおこ)さん

 この世の「違和感」を提示し、読者の「常識」を揺さぶる。小説に期待される働きのひとつだ。そこにたっぷりの毒とユーモアを盛り込んで読ませるのが本作。テーマは現代の労働現場の手応えのなさと、その超克か。「単なる嫌悪の叫びというよりも、『ヘン』なところに興味があるんです」。松田の大きな瞳は、表現する喜びと憂いを同時に湛(たた)えている。

 主人公の英子は英語を熱心に勉強してきた。英語は世界への扉を開く魔法のはずが……、30歳を控えた今も非正規雇用の身だ。国際学会の受け付けやクローク係など短期の仕事ばかり。「大半が私の実体験に基づいています」。高級ホテルの廊下に待機し、部屋で繰り広げられる海外投資家相手の説明会のタイムキーパー係に至っては、存在の意味自体が謎だ。

 これだけでも十分に面白いのだが、英子をはじめ登場人物たちはおのおの「森」を持っている。仕事を終えるとそこに帰っていく。何の説明もされず、所与の事実となっている。森が表象するのは多様性であり、自己回復力であり、もちろん生命力。私たちは満員電車に揺られて小さな家に帰るのだとしても、心の中には現実に「森」が茂っているはず。だから、読めば決してファンタジーとは思えない。「職場と森の接続点は意識せず、迷いなく書きました」

 行き詰まった英子は母親と2人で住む森を出ようとする。すると、森に異変が起きる。曲折を経て、英子は母親に再会する。その際、森が「べりべりばきばき」と音を立てるシーンは、しびれた。現実と空想の境界を見せる手練の技だ。さて、英子は森を出るのか否か。決断の理由やいかに。物語に光が差し始め、読む者の背を押してくれる。

 松田は今、34歳。「『個性を大切に』『自分らしく』と、私の世代は言われ続けてきました」。そんな“呪い”の滑稽(こっけい)さを活写した初の単行本『スタッキング可能』を昨年刊行し、文壇に旋風を巻き起こした。本作は第二作品集となる。

 次に何をものするのだろう。「男性優位のマッチョ思想が野放しになっている気持ち悪さ。なぜ、女性が出産と仕事を両立させないといけないのか。題材と現象は転がりまくっています」<文と写真・鶴谷真>
    --「今週の本棚・本と人:『英子の森』 著者・松田青子さん」、『毎日新聞』2014年03月16日(日)付。

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