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覚え書:「くらしナビ・ライフスタイル:こだわりの本、小豆島から 神奈川から移住して出版社、浅野卓夫さん」、『毎日新聞』2014年03月20日(木)付。

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くらしナビ・ライフスタイル:こだわりの本、小豆島から 神奈川から移住して出版社、浅野卓夫さん
毎日新聞 2014年03月20日 東京朝刊

(写真キャプション)小豆島で出版社を始めた淺野卓夫さん=香川県土庄町甲のサウダージ・ブックスで

 瀬戸内海の小豆島で昨年秋、神奈川県から移ってきた浅野卓夫さん(39)が、出版社「サウダージ・ブックス」を起こした。東京一極集中が著しい出版界。大阪や名古屋などの大都市でも経営は難しいが、浅野さんは「島には暮らしに根差したものづくりの伝統がある。本づくりには格好の環境です」と意に介さない。

 本州から小豆島へは岡山市からフェリーで70分かかる。瀬戸内の入り江や島々がのどかな海に点在する景観の中を行く。小豆島は香川県に属するが、高松市からは高速艇で30分の距離で、同様に瀬戸内海国立公園の海を渡る。海上からは岬や島の斜面に作られた耕作地が一望でき、地道に積み重ねられてきたひとの営みにも思いをはせずにはいられない。

 ●海と畑が着想の源

 小豆島北部の土庄町中心部にサウダージ・ブックスの事務所がある。浅野さんは「いい景色だったでしょう。その中でゆっくりと、どんな本を作るかを考えられます。付き合いの飲み会もほとんどないですから」と笑って言った。出版物は全国に流通させたいと考えており、1カ月に10日間は関東や関西の書店回りをしている。営業を考えた場合の地の利は極めて悪いが……。

 設立直後の昨年10月に「瀬戸内海のスケッチ 黒島伝治作品集」を出版した。黒島(1898?1943)は小豆島出身でプロレタリア文学の旗手として活躍したが、そのイメージだけで語られがちで、今はろくに読まれていない。浅野さんは「優しさのこもった作品が多く、ここに来てますます好きになりました。その視点から作品集を作り、もう一度読まれるきっかけを作りたいと思いました」と語る。作品選びは、エッセイストで、京都で古書店を営む山本善行さんに依頼した。

 出版後すぐ、新聞や雑誌の書評で取り上げられた。特に現代詩作家の荒川洋治さんは毎日新聞紙上で「今年の3冊」の一つに挙げ、「文章と構成の素晴らしさ。文学を知ることは、黒島伝治を知ることだ」と絶賛した。島での着想がいち早く実を結んだのだった。

 ●手仕事に学ぶ

 島で日常的に顔を合わせるのは畑を作ったり、特産品のオリーブ油やしょうゆ、そうめんづくりの手仕事に携わっている人が多い。その姿勢に学ぶことが多いともいう。

 「昔ながらの仕事というのは、とても細かい部分にまでこだわるのです。そこに自分の仕事に対する誇りもある。文字組み、表紙づくりなど、本の半分は手仕事のようなもの。電子書籍が増えてきた時代に、なぜ紙の本を作るのかという自分自身の疑問に対する答えになっています」

 「瀬戸内海のスケッチ」の表紙の絵は、絵本作家のnakabanさんに依頼して、たそがれ時の瀬戸内を描いてもらった。表紙を外して裏面を広げると、全面に表紙の絵が印刷してあり、絵だけを楽しめる。「こだわってみました。費用も手間もかかり、いつもできるわけではありませんが、なかなかいいでしょう」と得意げな顔をした。

 ●「多様な文化」実践

 文化人類学を志していた浅野さんは、ブラジルに留学して日系移民を研究した。当時よく通った農場で、ある男性と出会う。日本で初めて生活協同組合を設立した社会運動家・賀川豊彦を支え、さらに小豆島と隣り合う豊島で農民福音学校を開いた藤崎盛一から教えを受けたという。浅野さんはこの男性に「日本へ戻ったら豊島へ行き、高齢の自分の代わりに墓へ参ってほしい」と頼まれた。

 帰国後、文化人類学者の山口昌男氏の付き人となり、その紹介で編集の仕事を始めた。フリーに転じた後の2010年、ようやく豊島での墓参りを果たした。島を訪れるうちに、自然や人々への愛着が高まり、移住した。サウダージ・ブックスの事務所は小豆島に置き、高速船で海上15分の通勤をしている。

 小豆島での挑戦には「学んできた中に『文化の多様性の大切さ』がある。出版界の東京中心というサーキットから外れてみたいとも思ったのです」と語った。

 ●アイデア全国発信

 昨年末からは、料理など実用書シリーズの刊行も始めた。ブックカフェなど、島でのイベント開催にも力を入れる。将来的には、作家が島へ作品を書きに来て滞在する「ライタブルレジデンス」を作りたいとも構想する。

 浅野さんは「都会にいたら思いつかないアイデアが、次から次へと湧いてきます。経営を確立して島の雇用にも貢献したい」と意欲満々だ。

 同社の本は、30都道府県の約150店で取り扱い、全国の書店で注文できる。詳しくはhttp://saudadebooks.jimdo.com/へ。問い合わせは電話0879・62・9889。【戸田栄】
    --「くらしナビ・ライフスタイル:こだわりの本、小豆島から 神奈川から移住して出版社、浅野卓夫さん」、『毎日新聞』2014年03月20日(木)付。

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