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覚え書:「貧者の教会」(上)(中)(下)、『毎日新聞』2014年03月20日(木)~22日(土)付。


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貧者の教会:法王就任1年/上 伝統捨てて「南」へ 増す影響力、首脳の訪問続々
毎日新聞 2014年03月20日 東京朝刊

(写真キャプション)執務室の窓に姿を見せた法王を写真に撮るフィリピン人女性信徒=バチカンのサンピエトロ広場で2014年3月9日、福島良典撮影

 3月9日、バチカンのサンピエトロ広場。日曜の祈りの集いでフランシスコ・ローマ法王(77)が姿を現すと、フィリピン人女性信徒、アイリ・ボニファシオさん(27)が歓声を上げた。「法王はアジアに関心がある。(昨年11月には)台風被害を受けたフィリピンのために言葉をくださった」。アジア重視路線を肌で感じている。

 法王は8月に初のアジア訪問として韓国を訪れる。日本全国のキリスト教カトリックの司教で作る「日本カトリック司教協議会」や長崎県は来年の訪日を招請。2016年にはフィリピンを訪れる可能性がある。8年弱の在位中に欧州11カ国を歴訪しながら、アジアは訪れなかった前任のベネディクト16世(86)とは対照的だ。

 「先々代の故ヨハネ・パウロ2世(ポーランド出身)は『欧州法王』で、欧州の思想を(ソ連など)域外に輸出した。ベネディクト16世(ドイツ出身)は欧州域内に閉じこもった」。バチカン専門記者のピエロ・スキアバッツィ氏(55)が分析する。

 だが、南米アルゼンチン出身のフランシスコ法王は日本にキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエル(1506-52年)らが創設した修道会イエズス会の出身。視線は欧州でなくアジア、アフリカ、中東など「南」に向いている。

 「支援が必要な人に寄り添う『貧者の教会』を掲げる法王は『南の法王』だ。欧州は眼中にない」(スキアバッツィ記者)。欧州でカトリック教会の地盤沈下が進み、アジア、アフリカなどでの信徒数拡大が頼みの綱というお家事情もある。

 軍隊を持たない最小国家バチカンは世界各国で暮らす計約12億人のカトリック信徒に信仰を通じて影響力を及ぼす究極のソフトパワーだ。法王が昨年9月にシリア内戦の平和的解決を訴え、軍事攻撃の回避に向けた環境を整えたように世界政治の潮流を左右するケースもある。

 昨年3月の就任以来、影響力に着目した各国首脳の「法王詣で」が起きている。昨年はイスラエル、パレスチナ、ヨルダンなどの中東首脳やプーチン露大統領と会談。今月27日には「ソフトパワーの法王とハードパワー・米国のオバマ大統領との頂上会談」(同)がバチカンで実現する。

 バチカンのロンバルディ報道官は「首脳との会談の話題は平和と国際社会の連帯が多い」と指摘する。だが、法王の外交は単なる平和主義ではなく、大国との力関係や教会の利益を重視する「リアル・ポリティクス」(現実主義政治)に近い側面がある。

 アサド政権寄りのキリスト教徒がイスラム系反体制派の攻撃を受けるシリア内戦。昨年9月、法王が米国の好戦論に異を唱え、サンピエトロ広場で開いた平和集会に駆けつけたシリア人は政権支持派だけだった。「反体制派は法王の軍事攻撃回避の呼びかけがアサド大統領を利すると考え、不参加を決めた」。在欧反体制派ジャーナリストが明かす。

 一方、ウクライナ南部クリミア半島を巡るロシアとウクライナの対立では双方に「誤解」を解消するよう促す控えめな発言が目立つ。17日には反ロシア派のウクライナの聖職者と面会し「保護」を約束したが、プーチン大統領との関係を損なわないようにとの気兼ねがのぞく。

 歴代法王の伝統的な欧州中心主義の殻を破り、世界を見据えるフランシスコ法王。反戦平和の理想と、紛争地の信徒を守る現実的な使命との間でどう折り合いを付けるか。バチカン外交の真価が問われる。

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 フランシスコ法王がカトリック史上初の中南米出身法王に就任して19日で1年がたった。法王によって何がどう変わったのか。バチカンのいまを報告する。【ローマ福島良典】

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 ◇法王の外国首脳との会見

2013

 5・18 メルケル独首相

 7・22 ルセフ・ブラジル大統領

 8・29 アブドラ・ヨルダン国王

10・17 アッバス・パレスチナ自治政府議長

11・14 ナポリターノ伊大統領

11・25 プーチン露大統領

12・2  ネタニヤフ・イスラエル首相

2014

 1・24 オランド仏大統領

 3・27 オバマ米大統領(予定)

 4・3  エリザベス英女王(予定)
    --「貧者の教会:法王就任1年/上 伝統捨てて『南』へ 増す影響力、首脳の訪問続々」、『毎日新聞』2014年03月20日(木)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140320ddm007030093000c.html:title]

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貧者の教会:法王就任1年/中 「情」で人心つかむ
毎日新聞 2014年03月21日 東京朝刊

(写真キャプション)フランシスコ・ローマ法王のファン雑誌「私の法王」の広告看板もローマにお目見えした=2014年3月10日、福島良典撮影

 昨年8月7日、イタリア北部ペーザロに住む会社員、ミケーレ・フェッリさん(42)の電話が鳴った。「こんにちはミケーレ、フランシスコ法王です」。聞こえてきたのはフランシスコ・ローマ法王(77)のアルゼンチンなまりのイタリア語だった。驚くミケーレさんに法王は受け取った手紙の内容を話し始めた。

 ガソリンスタンドを経営していたミケーレさんの長兄、アンドレアさん(51)が2カ月前、金庫のカギを奪おうとした従業員のマケドニア人の男(25)に殺された。キリスト教カトリックの神父の依頼で、無職だった18歳の時に雇い入れ、約7年間、家族同然の付き合いをしていた男だった。

 ミケーレさんは17歳の時に交通事故に遭い、車椅子生活を送っている。2歳年上の次兄はダウン症だ。アンドレアさんは一家の大黒柱だった。ミケーレさんは法王あての手紙に「もう神を許すことはできない」と抗議の言葉を記していた。

 「手紙を読んで涙が出ました」--。法王は以来、ミケーレさんの母親に数カ月おきに電話をかけ続けている。最近は3月3日に電話があった。「法王が私たち一家のために祈ってくれる。それで母も自分たちも前に歩き出す力を得られた」

 支援が必要な社会的弱者に慈悲と救いの手を差し伸べる「貧者の教会」を目標に掲げる法王。不幸に見舞われたイタリア内外の信徒に直接電話をかけることで知られている。飾らない人柄で人々に語りかけ、寄り添う。

 3月5日には世界初の法王のファンのための週刊誌「私の法王」がイタリアで創刊され、各地のキオスク(新聞・雑誌販売所)に並んだ。創刊号は50万部。アルド・ビタリ編集長は「特別な人物なのに『庶民の生活様式』を守っているのが人気の秘密だ」と話す。

 ANSA通信によると、昨年3月の就任から昨年末までの約9カ月間にバチカンで行われたミサ、日曜の祈りの集いに参加した信者らの数は約662万人。前任のベネディクト16世(86)時代の2012年(約230万人)の約3倍に上った。

 神学者のベネディクト16世はイエス・キリストの伝記を著した学究肌。これに対して、フランシスコ法王は教会をけが人をいやすための「野戦病院」と位置づける庶民派。「理」と「情」。2人の法王には、カトリック聖職者が併せ持つ二つの顔が現れている。

 法王の「情」の顔はイエズス会の宣教師、フランシスコ・ザビエル(1506-52年)ゆずりかもしれない。上智大学文学部史学科の川村信三教授は「キリスト教としてあるべき姿勢を原則として示す。しかし、目の前の『小さな人びと』を忘れてはならない。ザビエルはむしろ後者に重きを置いたからこそ、多くの人が彼の内に『キリストの愛』を見いだせたのだろう」と指摘する。【ローマ福島良典】
    --「貧者の教会:法王就任1年/中 「情」で人心つかむ」、『毎日新聞』2014年03月21日(金)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140321ddm007030079000c.html:title]

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貧者の教会:法王就任1年/下 「被告」から「模範」へ
毎日新聞 2014年03月22日 東京朝刊

カトリック教会の聖職者が子どもに性的虐待をしていた問題を巡り、教会指導者らを提訴したバーバラ・ドリスさん(右)=米ミズーリ州で2011年11月6日、ロイター

 「カトリック教会がスキャンダルの『被告』役から、影響力のある『道徳の権威』になった」。近著「フランシスコのバチカン」(伊モンダドリ社)を出したイタリア紙コリエレ・デラ・セラのマッシモ・フランコ論説委員はフランシスコ・ローマ法王(77)就任から1年のバチカンの変化をそう総括する。

 前任のベネディクト16世(86)の在位中、バチカンは聖職者による児童への性的虐待や宗教事業協会(通称・バチカン銀行)のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑、法王庁の権力闘争などのスキャンダルに見舞われた。このため、昨年3月の法王選挙会議(コンクラーベ)に先立つ枢機卿会議でバチカン改革が次期法王の取り組む任務に据えられた。

 マフィアが子弟を神学校に進ませ、活動資金をバチカン銀行で蓄財、洗浄していたとのうわさもあった。「フランシスコ法王の登場までバチカン銀行は『租税回避地』で、資金洗浄や脱税などの捜査に非協力的だった」。マフィア取り締まりを統括するイタリアのフランコ・ロベルティ検事(66)が指摘する。

 法王はイタリア司法当局への協力を指示。法王庁財産管理局の元高官がバチカン銀行を舞台にした資金洗浄でイタリア当局に摘発された。一方、法王は外部の金融専門家を迎えて法王庁の財政、資産管理を統括する「経済省」を新設するなど透明性の向上に努めている。だが、性的虐待問題では取り組み不足を指摘する声もある。

 米ミズーリ州セントルイスの女性、バーバラ・ドリスさん(66)は6歳の時から7年にわたって地元の教会の神父から性的虐待を受けた。今は市民団体「司祭による虐待被害者の会」の一員として被害者支援にあたる。昨年のコンクラーベの際、地元テレビのインタビューで新法王への期待を語っていた。

 フランシスコ法王は昨年12月、性的虐待の再発を防止し、被害者を支援するための特別委員会を設立すると発表。3月5日付コリエレ・デラ・セラ紙のインタビューで「カトリック教会は透明性と責任を持って問題に取り組んでいる唯一の機関なのに批判されている」と不満を漏らした。

 だが、国連・子どもの権利委員会は2月、カトリックの聖職者が「全世界で何万人もの子どもの性的虐待に関与した」にもかかわらず、バチカンが「犯罪の広がりを自覚せず、子どもを守る必要な措置を取ってこなかった」と批判。性的虐待の疑いのある聖職者を即時に解任するよう求める報告書を発表した。

 法王就任から1年。ドリスさんは「法王は絶対君主なのでやりたいことはできるはず。性的虐待問題では何も行動が伴っていない」と手厳しい。変化への期待はあるものの、「子どもたちの安全が関わっていることだから、油断は禁物」と話す。法王は虐待の傷をいやすことができるか。世界が注目している。【ローマ福島良典】
    --「貧者の教会:法王就任1年/下 「被告」から「模範」へ」、『毎日新聞』2014年03月22日(土)付。

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