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日記:差別を温存する官僚主義とことなかれ主義

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浦和レッズのサポーターによる「Japanese Only」の掲示問題。すったもんだの末、ようやく結末を迎えた。

そもそも、指摘のあった時点で、厳格に対応すれば「済む」話な訳だったにもかかわらず、「差別と“うけとられる”恐れがあるかも」的なあいまいな対応を積み重ねた結果、おおいなるねじれになってしまったというのが実相か。

問題の文言は、「差別」と受け取られかねないではなくして、歴然とした差別表現。特に様々な人々が活躍するサッカーというスポーツに置いて、特定の国家や民族に準拠する排外主義は対極に位置する。

日本的精神文化とでもいえばいいのか。物事を大きくしたいくないという官僚主義が「差別」を放置し、ことを荒げてはならないことなかれ主義がその浅はかさを明らかにしたといってよい。

差別に対しては厳然と対応する。この事件から学ぶ必要があろう。

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クローズアップ2014:サッカー・J1浦和「差別横断幕」 厳罰化、世界の流れ
毎日新聞 2014年03月14日 東京朝刊

 サッカー・J1の浦和サポーターが「JAPANESE ONLY」と書かれた人種差別的な横断幕を掲出した問題で、Jリーグは13日、浦和に「無観客試合」という前代未聞の処分を下した。厳罰で早期解決を図った背景には、人種差別に厳しい世界的な潮流の中で、今回の問題はリーグ全体の存在基盤を揺るがしかねないという危機感があった。

 ◇「基盤揺るがす」 J危機感

 9日に一報を知った村井満チェアマンは10日、浦和の淵田敬三社長からの報告に「明確に差別的と位置づけた」という。浦和に再調査を指示し、今週中の報告を求める一方で、12日にはすでに無観客試合を決意。処分案を裁定委員会に諮問していたという。12日夜に浦和から報告があると、13日午前には淵田社長と面会して処分を伝えた。8日の発生から6日目での処分に、村井チェアマンは「私の判断として、意思を早く伝えたかった」と強調した。

 危機意識の背景には、欧州では人種差別行為が暴力の要因にもなるため、欧州サッカー連盟(UEFA)や各国協会では厳罰化の流れが進んでいることがある。人種差別はリーグ全体やクラブの経営基盤を揺るがしかねない問題だ。Jリーグは2008年から緩やかに観客数が減っている。村井チェアマンは就任時に年齢、性別、国籍を問わず、幅広い層の観客を獲得したいと訴えた。しかし「日本人以外お断り」と読める今回の横断幕について、浦和サポーターは外国人の観客に入ってきてほしくなかったという趣旨の説明をしている。

 また浦和は10年5月にも対戦相手の在日朝鮮人選手に対するサポーターの差別的発言などで制裁金が科されている。今月1日のガ大阪戦では、選手への侮辱にもとれる指笛が確認され、Jリーグ関係者は今季から浦和に加入した李忠成選手に対するものである可能性を指摘している。李選手は在日韓国人で、07年に日本国籍を取得。ごく一部でも、浦和サポーターに差別的な言動の「温床」はあった。これまで科されていた制裁金以上の、重い処分を下したのは、すべての人にスタジアムの安全性や快適性を示す必要があったからだ。

 さらに、Jリーグが積極的に進めるアジア戦略へのダメージも考慮された。タイやベトナムなど各国リーグと提携するほか、昨季はJ2札幌にベトナム、今季はJ1甲府にインドネシアから選手が入団。各クラブのホームタウンではそれぞれの国との交流が生まれていた。経済成長が進む東南アジアなど外国からの集客も狙っていただけに、村井チェアマンは「今回のことはマイナス。日本は差別的なことを徹底して許さない国だと示すことが大事だ」と話し、さらに「改善されなければ、(下位ディビジョンへの)降格なども視野に入ってくる」と、今後も厳しい姿勢で臨む方針を示した。【村社拓信】

 ◇欧州でも根絶遠く

 【ロンドン小倉孝保】欧州では人種差別行為が後を絶たない。サッカーと民族主義が密接に結びついてきた歴史もあり、欧州サッカー連盟(UEFA)や各国のリーグは「ノートレランス(非寛容)」方針で臨んでいるが、差別根絶は難しいのが実情だ。

 欧州では1970年代から、黒人選手に向けて観客がバナナを投げ込むなどの差別行為があった。アフリカ生まれの選手がプレーするようになったためだ。その後、黒人選手を罵倒したり、反ユダヤ的な発言・行為をしたりするケースが社会問題になってきた。繰り返される人種差別行為に、国際サッカー連盟(FIFA)やUEFA、各リーグは厳罰化で対応してきた。具体的には、クラブの勝ち点の剥奪や下部リーグへの降格▽選手の出場停止(最低10試合)▽スタジアムの部分閉鎖(初犯)、無観客試合と罰金(再犯)--などだ。

 しかし、昨年だけでも▽イタリア4部リーグで、観客がガーナ代表でACミランの黒人選手に猿の鳴き声をまねたやじをした(1月)▽ギリシャ代表選手が試合中にナチス式の敬礼をした(3月)▽CSKAモスクワ対マンチェスター・シティーの試合で、観客がシティーの黒人選手に人種差別的なチャント(応援のかけ声)をした(10月)▽英プレミアリーグで選手が「ケネル」と呼ばれる反ユダヤ主義のジェスチャーをした(12月)--など観客、選手から差別行為が続く。

 90年代に旧ユーゴスラビア紛争が始まったが、欧州ではサッカーの試合で各民族が自身の民族の優位を誇ったり、相手民族を罵倒したりするなどサッカーが民族主義をあおるのに利用されてきた面がある。

 また、最近は労働市場の流動化・国際化が進み、アフリカやアラブ、アジア系など多くの移民が流れ込んできたことから欧州で移民排斥の働きも強まっている。

 一方、サッカーはラグビー、ゴルフ、テニスと比べ最も早く人種や階級に開放されたスポーツだ。特に、欧州サッカーには移民選手が多く欧州の多文化主義の象徴になっている面もある。そのため、各国政府や社会はサッカー界の人種差別への厳罰化を受け入れている。

 ◇「一人一人の問題」 認識の必要性指摘

 国内での人種差別的行為を巡っては、在日コリアンの排除などを掲げる「ヘイトスピーチ」が近年急速に問題化した。取材してきたジャーナリストの安田浩一さんは「最近、インターネット上の人種差別や民族差別の醜悪な文言が、現実社会に持ち出されることが増えてきている」と指摘。今回のサポーターの行為について「やった人の意図は不明だが、排外主義が市民権を得たかのような風潮の延長線上にあるとすれば、サッカーだけの問題だけではなく、私たち一人一人の問題だと認識する必要がある」と話した。【町田徳丈】

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 ◇Jリーグの最近のサポーター不祥事

 <2008年>

5月17日 J1浦和・ガ大阪戦で試合終了後にサポーター同士の乱闘騒ぎに。浦和サポーターが出入り口をふさぎ、ガ大阪サポーターが競技場内に約3時間半足止めされる。浦和にけん責と制裁金2000万円、ガ大阪にけん責と1000万円の処分。

 <2009年>

6月13日 浦和サポーターがナビスコ杯の取材中だったフジテレビのカメラマンに暴行し、その後逮捕される。浦和にけん責と制裁金200万円の処分。

 <2010年>

5月15日 J1仙台・浦和戦後に、浦和のサポーターが仙台の選手に人種差別的な発言。浦和にけん責と制裁金500万円、仙台にけん責と制裁金200万円の処分。

 <2011年>

5月28日 J1清水・磐田戦の試合前に磐田のサポーターが「ゴトビへ 核兵器作るのやめろ」とイラン系米国人の清水・ゴトビ監督を中傷する横断幕を掲げ、両サポーターが小競り合いに。試合を主催した清水に警備の不備があったとしてけん責と制裁金200万円の処分。磐田には文書で厳重注意。

 <2013年>

8月24日 浦和サポーター4人がJ1清水・浦和戦の前に警備員への暴行容疑で逮捕される。公道では浦和サポーターが乗ったバスから、清水の選手バスに爆竹などが投げつけられる。浦和にけん責と制裁金1000万円の処分。
    --「クローズアップ2014:サッカー・J1浦和「差別横断幕」 厳罰化、世界の流れ」、『毎日新聞』2014年03月14日(金)付。

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