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覚え書:「メディア時評 『家族』と『世帯』は違う=徳野貞雄」、『毎日新聞』04月05日(土)付。


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メディア時評
「家族」と「世帯」は違う
徳野貞雄
熊本大文学部教授(農村社会学)

 3月は「家族」について考えさせられる報道が続いた。東日本大震災を軸に、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父滋さん、母早紀江さんと、めぐみさんの娘のキム・ウンギョンさんとの面会、ベビーシッター幼児死体遺棄事件である。「家族」とは何か、家族を取り巻く社会環境の変化に思いを巡らせた。
 震災報道では毎日は1面で「勇気の法被 父の誇り」(11日朝刊)、「休もう 泣こう 生きよう」(12日朝刊)の見出しで、生き残った人たちの思いを載せた。各紙も同様の記事が多かった。失った肉親は自分の中に生き続けるという思いと、現実の生活の中での欠落感、不安の混在を描いた。朝日は11日朝刊別刷り特集で復旧の進捗状況を各種データで示し「崩れる地域の絆」と書いた。
 震災以後、メディアは「家族の絆」や「地域の絆」を多用して復興を呼びかけた。NPOやボランティア、企業組織、行政などの支援活動も報道したが、被災地にいる親兄弟を、離れて暮らす子や孫がどのように支援したのかはあまり注目しなかった。彼らは、震災当初から現在、そして将来にわたっても、被災者を黙々と支援し続けるだろう。「家族」だからだ。
 日本では「家族」と「世帯」の違いが非常に曖昧で混同されている。高齢の方に「ご家族は何人ですか」と尋ねると、多くの方が「私と妻の夫婦2人です」。「お子さんやお孫さんはいないのですか?」。重ねて聞くと「子供3人に孫が5人いますが別居しています。ですから家族は2人です」と答える。そこで「子供さんやお孫さんは家族ではないのですか?」と尋ねると、答えは「……」となる。
 「世帯」は、同居して共同生活を営んでいる集団。「家族」は、空間、時には時間を超えて生活上も精神上も機能する集団である。近代化、産業化、都市化と災害にさらされる現代社会では、住民台帳で把握されている「世帯」は、分散・極小化し、一見「家族」が解体・弱体化したようにみえる。
 横田さんご夫婦とめぐみさんやウンギョンさんは、遠く離れていても初対面でも「家族の絆」で結ばれて、一方、ベビーシッター事件の被害者は、幼児を預かってくれる人もいない都市の「解体した家族」像として報道される。
 メディアは「家族」の「絆」と「解体」を、都合のいいように使い過ぎている。「家族」と「世帯」の違いをじっくりと考えることは非常に重要である。
(西部本社発行紙面を基に論評)
    --「メディア時評 『家族』と『世帯』は違う=徳野貞雄」、『毎日新聞』04月05日(土)付。

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