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書評:伊藤真『現代語訳 日本国憲法』ちくま新書、2014年。


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伊藤真『現代語訳 日本国憲法』ちくま新書、読了。本書は長らく法曹教育に携わってきた著者による日本国憲法と大日本帝国憲法の現代語訳。近現代日本の性格を規定した二つの憲法を読み返すことで、この国の過去、現在、未来が浮かび上がる。条文ごとに解説付き。憲法の基礎的知識習得の上で必携の一冊。

例えば11条~「国民は誰でも、すべての人権をもっている。このような人権は、公権力によって侵されてはならいものであるし、人間として生まれた人、またこれから生まれてくる将来のすべての人に与えられる永久のものである」(基本的人権の性質)。

巻末訳者解説では近代国家と立憲主義について言及。立憲主義は「当たり前」過ぎるから改めて解説されることが少ない。要は「憲法の価値は個人の尊重(尊厳)にあり、憲法は国家を縛るための道具」。個人を束縛する法律と国家を束縛する憲法は矢印の向きが逆。

民主主義国家は、国民の多数意思に従って政治的な決定が下される。しかし多数派が常に正しいとは限らないから、人間の弱さに着目する必要がある。いわばあらかじめ歯止めを掛ける仕組みが必要であり、それが憲法。国家権力の制限こそ民主的正当性を確立する。

憲法は国家の基本法だから、文化や道徳を盛り込むべきだとの声も多いが、憲法の役割は「自由のために権力を縛る道具」に過ぎないから、「国の形を書けばそのとおりに実現される魔法の杖」ではない。倫理的な価値は押しつけるものではなく内発性が重要になる。

自分たちの生まれ故郷を縛るのはおかしいとの立憲主義批判がある。しかし、立憲主義的拘束対象の「国」とは、カントリーではなくステートとかガバメント。人為的に作った権力主体と郷土を錯覚することなく、機能としての国家理解から始める必要がある。

立憲主義は「人間が間違いを犯す生き物である」という真理に対する謙虚さの現れであり、その内実としての平和主義も「人類の英知の結晶」。決して西洋の借り物でなく、日本の伝統にも根ざすもの。易きに流れず原点にたち戻させてくれる一冊。 


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