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覚え書:「書評:約束の海 山崎 豊子 著」、『東京新聞』2014年03月30日(日)付。


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約束の海 山崎 豊子 著  

2014年3月30日


◆戦争しないための軍 構想
[評者]権田萬治=文芸評論家
 大阪船場商人の世界を描くことから出発した山崎豊子は、医学界の古い体質にメスを入れた『白い巨塔』以降、社会性豊かな主題に挑戦して来たが、『二つの祖国』『大地の子』などの執筆を通じて晩年には、戦争こそが人間の運命を左右する最大の悲劇であるという思いを強く抱くようになった。
 今回刊行された遺作『約束の海』は、三部構成で「戦争をしないための軍隊」を追究する構想だった。しかし著者が、惜しくも週刊誌連載中に死去したため、第一部にあたる「潜水艦くにしお 編」だけの出版となった。
 第一部の本書は、日米開戦で特別任務のため海軍少尉として真珠湾に出撃して捕虜になった花巻和成を父親に持つ二等海尉花巻朔太郎が、海上自衛隊の最新鋭潜水艦「くにしお」の見習い哨戒長として航海訓練に出るところから始まる。 
 航海訓練を終えた朔太郎は、休暇中に知り合ったフルート奏者の小沢頼子に強く惹(ひ)かれるが、新たに始まった自衛隊艦隊による展示訓練に参加していた「くにしお」が、漁船と衝突事故を起こしてしまう。そして…。
 防衛機密の厚い壁に阻まれる中での潜水艦取材は苦労の連続だったようだが、導入部の潜航中の艦内の動きなどは、現実感豊かに書き込まれ、何人かの登場人物の肖像も手堅い筆致で描かれている。
 残念ながら第一部だけでは、「戦争をしないための軍隊」という主題は明確には浮かんで来ないが、巻末には、続く第二部「ハワイ 編」、第三部「千年の海 編」(仮題)の概要が掲げられており、作者の構想の大筋と「戦争をしないための軍隊」のイメージを読者がある程度推測することは可能である。
 絶対に戦争をしないために日本の軍隊はどうあらねばならないのか、という山崎豊子の人生最後の真摯(しんし)な問いかけには、深く心に迫るものがあるように思う。
 (新潮社・1785円)
 やまさき・とよこ 1924~2013年。作家。著書『不毛地帯』『沈まぬ太陽』など。
◆もう1冊 
 山崎豊子著『作家の使命 私の戦後』(新潮文庫)。半世紀にわたって書き続けてきた作家が自作の背景や取材秘話を語るエッセー集。
    --「書評:約束の海 山崎 豊子 著」、『東京新聞』2014年03月30日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014033002000175.html:title]

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