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覚え書:「今週の本棚・本と人:『世界の果て、彼女』 著者・金衍洙さん」、『毎日新聞』2014年04月06日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『世界の果て、彼女』 著者・金衍洙さん
毎日新聞 2014年04月06日 東京朝刊

 (呉永雅(オ・ヨンア)訳 クオン・2700円)

 ◇「疎通」への願い込めた短編集--金衍洙(キム・ヨンス)さん

 現代韓国文壇の中心を担う作家の短編集が刊行された。初の邦訳単行本。収録した7編に通底しているのは、人と人は理解し合えるのか、との根源的な問いだ。他者とは通じ合えないという「絶望」を踏まえて始まる、「希望」の物語である。

 「ネットを使ったたくさんのツールが出ていますが、互いを深く知るのは大変難しいですね」。現代の人間関係をこう話す。

 表題作「世界の果て、彼女」は、24歳の「僕」がある一編の詩をきっかけに、年上の女性教師と出会うところから始まる。詩の作者は、夫がいる女性を愛したまま早世。「僕」と教師は、木の根元に詩人が埋めた女性への手紙を発見する。小さな奇跡によって、手紙は届くことになる。

 著者がこだわる文学的テーマは「疎通」。韓国語では「ソトン」と読み、日本語の「疎通」とは少しニュアンスが違う。「お互いを理解して納得して受け入れる」ことまで踏み込むという。その意味で、本作は表題作を含めて「疎通」への願いが満ちた短編集であるといえる。巻末には著者の言葉として「僕たちは努力をしなければ、互いを理解することはできない。他者のために努力するという行為そのものが、人生を生きるに値するものにしてくれる」と記している。

 この作品によって、著者は韓国で読者を増やした。「前まで自分は小説だけを書けばいいと思って、読者とのつながりを気にしなかった。でもこの小説を出して読者と出会い、自分の話が伝わったことはとても新鮮でした」。読者との「疎通」に手応えを感じている。

 1970年、韓国・慶尚北道生まれ。両親は10代まで日本で育ち、今も叔母が東京に暮らしている。「小さいときに父親が日本の演歌を歌ったり、母親に日本語で数字を教えてもらったり、無意識な親しみはありました」。来日の回数も多く、「日本は個人が楽しむ文化や空間があって、安定している」と印象を語る。短編には日本人や日本の風景が登場する。

 日中韓を取り巻く緊張状態について尋ねると、「人と出会い、生きていくということは、自分の考えが間違っていたかもしれない、と気付く過程ではないかと思います」。思慮深い答えが返ってきた。<文と写真・棚部秀行> 
    --「今週の本棚・本と人:『世界の果て、彼女』 著者・金衍洙さん」、『毎日新聞』2014年04月06日(日)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140406ddm015070030000c.html:title]

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