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覚え書:「書評:物数寄考 骨董と葛藤 松原 知生 著」、『東京新聞』2014年04月06日(日)付。


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物数寄考 骨董と葛藤 松原 知生 著

2014年4月6日

◆美に憑かれた表現者たち
[評者]梶井純=マンガ評論家
 近代以降にとりわけ顕著になるのだが、骨董(こっとう)・古美術について書かれたすぐれた文章はとても多い。わけても文学者や美術家たちによるそれらの多くは、それぞれの分野におけるかれら自身の表現の方法論ともかかわっているため、読者であるわたしたちの尽きない興味と関心の対象となってきた。
 ところが、メイン・サブともにいささか余裕のある諧謔(かいぎゃく)味も感じさせるタイトルを持ち、「学術論文」でもある本書は、まったく異質な視点で骨董・古美術を分析した、ちょっと比類のない書になっている。
 考察の対象となっているのは川端康成、小林秀雄、青柳瑞穂、安東次男、つげ義春、杉本博司の六人。いずれも骨董・古美術や古物にフェティッシュ(惑溺(わくでき))した、あえていえば、よくも悪くも「業」のような「狂気」にとり憑(つ)かれた表現者たちといっていい。
 かれらにたいする著者の関心ははっきりしている。それぞれに陰影はあるものの、かれらが骨董・古美術や古物に耽溺(たんでき)することが、すぐれた表現者としての営為(テキストとイメージ)にどのように反映されたかを考えるところに本書のテーマがある。
 その点では、中・近世イタリア美術史の研究者である著者自身が骨董・古美術の愛好者であるところから、本書も生まれたといえよう。専門分野への関心に完璧にシンクロするだけでなく、骨董・古美術が好きな者にしか視(み)えない、いってみれば一片の残欠(かけら)にさえ美を発見してしまえる知覚の燦(きら)めきを、この六人の芸術的営為のなかに著者は視たにちがいない。
 六人のすぐれた「物数寄(ものずき)」たちが骨董・古美術のなかで葛藤しつつ、生死・真贋(しんがん)・虚実の「あわい」に視たものがなんであったかについての著者の分析は、あたかも「狂気」を昇華する試みのように冷徹で、しかもあたたかい。あるいはそれらは、教養主義的なだけの趣味人にはほとんど不可解な手つきなのかもしれない。
(平凡社・4104円)
 まつばら・ともお 1971年生まれ。西南学院大教授、西洋美術史。
◆もう1冊 
 『青山二郎全文集』(上)(下)(ちくま学芸文庫)。小林秀雄や白洲正子に骨董趣味を伝授した文人の芸術論から文明批評までの文章を収録。
    --「書評:物数寄考 骨董と葛藤 松原 知生 著」、『東京新聞』2014年04月06日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014040602000175.html:title]

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