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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 病理医不足解消が必要=本田宏」、『毎日新聞』2014年04月09日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
病理医不足解消が必要
がん治療体制の質向上
本田宏 埼玉県済生会栗橋病院院長補佐

 「内視鏡で削る治療は可能ですか」「胃を全部取らなければならないのですか」。胃がんと診断されて、外来に紹介されてきた患者らが、必ずといって言いほど発する質問だ。私が医師になった35年前は、がん細胞を取り残さないように周囲のリンパ節に加えて、時には隣接する臓器も含め広範な摘出手術が主流だった。しかし、医学の進歩は目覚ましく、胃や大腸の早期がんは内視鏡による治療ができる時代となった。
 身体に優しい治療を可能にしたのは、内視鏡技術と、病理医による病理診断の進歩だ。内視鏡下に歳出下組織を顕微鏡で観察し、がんの性質や広がりを診断。追加切除の必要性を判定する。あるいは抗がん剤治療の根拠を提示し、乳がんなどではホルモン感受性や遺伝子情報を調べて、ホルモン療法や分子標的薬の治療効果が期待できる患者を選ぶこともできる。まさにがん治療の羅針盤を提供するのが病理医の重要な仕事となっている。
 だが、友人の病理医によると、医療保険が使える分子標的薬は現在は10種類程度だが、今後は増加が予測され、分子標的薬の効果の有無を示す病理検査が増えることが必須という。さらに病理医は10年前に比べて増えていないが、病理検体数は1・7倍程度に増えている。日本病理学会の指針によれば、日本の病理専門医は2012年現在2100人あまりで、人口当たりの病理医数は米国の約5分の1。「がん」を専門に扱う381のがん診療連携拠点病院でさえも53病院、全体の約14%で常勤病理医が不在で、東北地方などに不在病院が多い。
 一方、新しく病理専門医になる医師数は、この数年ほぼ横ばい。高齢化が進行して今後5年以内に、現在の病理専門医の約5分の1にあたる400人超が定年となり、保健医療機関の常勤医を離れる危険性がある深刻な事態となっている。
 日本医師会が08年に全国5540病院を対象に実施した調査でも、現在と比べた必要な医師数の割合は病理医が3・77倍と一番大きかった。多くの市中病院では、常勤病理医が不在のため診断まで時間がかかり、手術中に迅速診断ができない場合はがんを取り残さないために切除範囲を大きくするしかなく、患者にもデメリットが生じている。
 政府は06年にがん対策基本法を制定し、昨年は「がん登録推進法」が成立して、がん患者の情報を一元管理して治療や予防に活用する方針だ。しかし、いまだ医学部新設など抜本的な医師増員や数値目標を掲げた専門医育成の対策は取られていない。低医療費政策と医師不足問題を改善せずに、法律や統計整備だけで、がん治療体制の質を向上させることは不可能だ。
病理医 体内の臓器や組織の一部を取り出したり、解剖したりして調べ、病気の原因や状態を診断する医師。日本病理学会によると、大学病院などですら常勤病理専門医の数は平均2・31人、常勤病理専門医1人が約4割。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 病理医不足解消が必要=本田宏」、『毎日新聞』2014年04月09日(水)付。

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