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覚え書:「戦争俳句と俳人たち [著]樽見博 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2014年04月13日(日)付。


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戦争俳句と俳人たち [著]樽見博
[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)  [掲載]2014年04月13日   [ジャンル]歴史 人文 

■生き方の地肌があらわれる

 戦争俳句とは戦時下に詠まれた俳句だが、聖戦俳句、生活俳句、さらにはプロレタリア文学系の流れを汲(く)む俳句とその内訳は多岐にわたる。加えて俳句の本質をめぐり新興俳句と伝統俳句の論争もあり、この表現芸術に関わりをもった俳人たちの生き方はそれぞれ地肌があらわれている。
 著者によれば、戦争俳句の体系だった研究書はないという。本書はそこに斬りこんだ貴重な書である。山口誓子、中村草田男、加藤楸邨らの「巨星」を徹底解剖し、さらに有名無名の俳人28人をとりあげてその作品を紹介している。
 戦争俳句の中でもっとも有名な句集は長谷川素逝(そせい)の『砲車』(昭和14年4月刊)だという。高浜虚子の11頁(ページ)に及ぶ序文や上質紙を使っての異色の句集である。この句集を、日野草城が自らの主宰する「旗艦」で詳細に論じ、戦争における事実と戦争俳句の関係について本質的な視点を示した。そして、「わが馬をうづむと兵ら枯野(かれの)掘る」などの句は、事実を示していても文学性に乏しいと指摘した。
 その一方で、日野は、「大兵を送り来し貨車灼(や)けてならぶ」などは、実戦にふれて初めて可能なので、銃後作家には作れないと讃(たた)えた。水原秋桜子は、『砲車』の中の「寒夜くらしたたかひすみていのちありぬ」に惹(ひ)かれたとの印象批評を述べている。
 著者はこうした事実を紹介しながら、この句集は「演出された句集」、つまり素逝は戦地にあった少尉だが、国家や軍部が戦争俳句の範を示すための「官製句集」ではないかと解説する。著者は多くの資料に目を通して、俳人一人一人のその心情にも入りこんで分析を続けるので、この指摘はきわめて説得力を持っている。
 プロレタリア俳人・栗林一石路(いっせきろ)の説く「実践的俳句の提唱」が新鮮に感じられ、自由律の句、「出征の旗がくらい電線にひつかゝつたりしてゆく」が妙に心に残る。
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 トランスビュー・3456円/たるみ・ひろし 54年生まれ。「日本古書通信」編集長。著書『古本通』『古本愛』など。
    --「戦争俳句と俳人たち [著]樽見博 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2014年04月13日(日)付。

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