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覚え書:「書評:ヘイトスピーチ エリック・ブライシュ 著」、『東京新聞』2014年04月20日(日)付。

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ヘイトスピーチ エリック・ブライシュ 著

2014年4月20日

◆どこまで許す?各国の苦慮
[評者]五野井郁夫=政治学者
 日本は敗戦と講和を経て、現在まで自由民主主義の社会であり続けている。では、この社会で差別を煽動(せんどう)し人を傷つける言葉は、表現の自由の名のもとにどこまで認められるだろうか。本書は欧米の事例を広く渉猟することで、自由民主主義の社会における自由の擁護と差別の是正の間の緊張関係にせまる。本書の原題は「人種差別主義者になる自由?」だ。当たり前だが、他者を傷つけなければ成立しない自由など誰も持ち得ない。
 だが、近年この「当たり前」が危ぶまれている。東京都内では外国人観光客の多い銀座や浅草を狙った排外主義デモが頻発しているのだ。「ヘイトスピーチ(差別言論)」という術語が、排外主義の蔓延(まんえん)に警鐘を鳴らす意味で日本でも人口に膾炙(かいしゃ)するようになったのには、こうした背景がある。
 ヘイトスピーチの射程は、人種や民族に対する差別に留(とど)まらない。国籍や性別、宗教など、人が生まれ落ちたその瞬間、本人が選び取ることのできない先天的な事柄がすべて含まれる。自分の努力では変更不可能なことがらを理由に「殺せ」「出て行け」と罵声を浴びせられるのは不公正だからだ。
 どうすれば歯止めを掛けられるか。本書には各国の解決事例が網羅されている。イギリスのように一律に厳格な法規制で臨む国もあれば、米国のように州レベルで対応が異なる国もある。
 他方、日本では法整備が遅れている。それでも二〇〇九年に差別団体の在特会(在日特権を許さない市民の会)が京都の朝鮮学校に授業妨害を行った事件の民事判決では、京都地裁が在特会側に約千二百万円の支払いを命じた。また、排外主義デモがあるたびに、参加者の数倍もの良識ある市民らが毎回自発的に集まり排外主義と対峙(たいじ)する機運が、社会として生まれつつある。
 表現の自由をめぐる理論的背景から立法過程、市民運動まで網羅している本書は、差別と戦うすべての人々にとって強力な武器となるだろう。
(明戸隆浩ほか訳、明石書店・3024円)
 Erik Bleich 米ミドルベリー大教授。専門は政治と人種の問題。
◆もう1冊
 前田朗編『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか』(三一書房)。現在日本で起きているヘイト・スピーチ現象を整理し、対策を示す。 
    --「書評:ヘイトスピーチ エリック・ブライシュ 著」、『東京新聞』2014年04月20日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014042002000170.html:title]

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ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか
エリック・ブライシュ
明石書店
売り上げランキング: 16,748

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