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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 守るべき『岩盤』あり=宮武剛」、『毎日新聞』2014年04月23日(水)付。

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くらしの明日
私の社会保障論
守るべき「岩盤」あり
規制緩和と皆保険体制
宮武剛 目白大大学院客員教授

 「国民皆保険」は1961年度から始まり半世紀を迎えた。
 日本人の大半は物心ついた頃から保険証を持つが、もし健康保険制度がなければどうなるのか。病気やケガに備え治療費を用意しておくほかない。
 いったいいくら必要か。
 私たちが生涯に使う医療費は平均約2500万円(2011年度、厚生労働省推計)。人生80年とすれば1歳ごとに30万円の予算。ただし、総額の半分は70歳以降に使う。若い頃の保険料納付はつらいが、年を重ねるごとにありがたさは深まる。
 年齢に関係なく大病・難病になることもある。日本で最高額の医療費はいくらか。
 血友病の青年の治療に月額1億5423万円かかった例がある(12年度)。出血が止まらない難病のため、血液を固める1アンプル40~50万円もの注射を打ち続けるほかないからだ。
 総額の1~3割の自己負担はどうなるか。長期かつ高額な血友病、腎不全の人工透析などは特殊で自己負担は原則月額1万円で済む。一般的には「高額医療費制度」で、例えば医療費月額100万円でも3割負担(一般)ではなく9万円弱で済む。
 皆保険体制とは、誰もが保険証を持つだけではない。健康と命を守るために保険給付に上限はない。自己負担も何とか払える程度にとどめる。
 そんな「岩盤」を長年かけて固めた。「混合診療の禁止」もそのひとつである。
 一連の医療行為で「保険診療」と「保険外診療(全額自己負担)」を組み合わせて提供はできない。なぜか。
 まず、手術や薬品は公的に有効性と安全性を確認したうえ保険対象にされる。そうしないと、知識の乏しい患者は効果の低い治療や副作用の激しい薬にさらされる。
 また保険給付は現金ではなくサービス(現物)で提供され、保険診療と保険外診療の厳密な線引きは不可能に近い。例えば外科医が胆のうを全摘出した後で「バイパス造営は新手法で全額自己負担ですが、どうします?」と聞くような事態に陥る。
 さらに、未承認の薬や手術は一般に高額で、利用できる人は限定される。難病患者団体の多くが混合診療の解禁に反対するのは、その心配からだ。
 しかも混合診療は全面禁止ではない。「保険外併用療養費」制度で、公認が見込まれる有望な薬や手術は例外的に保険診療との組み合わせを認める。
 それでもなお「岩盤規制」打破に取り組む政府の規制改革会議は、患者が医師と合意のうえ保険外診療を個別に選べる「選択療養制度」(仮称)を提案する、という。
 砕くべき「岩盤」と守るべき「岩盤」を見極めないと大事な皆保険体制に亀裂が走る。

みやたけ・たけし 1943年京都市生まれ。毎日新聞論説副委員長、埼玉県立大教授、目白大教授を経て現職。専門は社会保障論。社会保障制度改革国民会議の委員などを歴任。著書に「介護保険の再出発」など。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 守るべき『岩盤』あり=宮武剛」、『毎日新聞』2014年04月23日(水)付。

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