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覚え書:「今週の本棚:荒川洋治・評 『中高生のための「かたづけ」の本』=杉田明子・佐藤剛史著」、『毎日新聞』2014年04月27日(日)付。

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今週の本棚:荒川洋治・評 『中高生のための「かたづけ」の本』=杉田明子・佐藤剛史著
毎日新聞 2014年04月27日 東京朝刊

 (岩波ジュニア新書・907円)

 ◇意識変え、未来をつくる手順と心得

 「今、あなたの部屋はかたづいていますか?」

 ハイ、と胸を張れる人は少ないだろう。十代向けだが、大人にも有益な一冊である。「あなたの部屋は、今のあなたそのままです」とはわかっていても、整理、整頓は面倒。外からは見えないから、ちらかしてもぜんぜん平気。それで「かたづけ」は夢物語に。

 では「かたづけ」のゴールはどこか。スーパーマーケットのように、どこに何があるかがわかる状態。「あなたの部屋の中、もしくはあなたの持ちモノすべての収納場所を三秒以内で答えられる」こと。

 そうでないと、さがしもので時間をとる。身辺も、この先の自分も見えないことに。「かたづけ」をすれば、「生活の変化、意識の変化、人生の変化」が起こる。手順は、次の通り。

 「出す」(すべてのモノをいまの場所から外に出す)→「分ける」(同じモノを一カ所に集める)→「選ぶ」(捨てられないモノは「迷いのエリア」へ)→「収める」。この本は、四月一八日発売だが、ぼくは二カ月ほど前の近刊予告で、題名を知った。この本がどういう内容になるかを想像し、発売に臨んだ。実際に読んでもっとも意外だったのは「分ける」の段階。

 鉛筆なら鉛筆、クリップならクリップと分けるとき、「あ、これは、いらない」と捨てたいところだが(ぼくはいつもそう)、その場で捨てずに、ひたすら分類。そうすると「自分がどんなモノを溜(た)め込みがちなのか、どれくらいの量のいらないモノを持っていたのか」を「知る」。自分を「知る」ことはそのあとモノを買うときに役立つのだ。「捨てたい気持ちもグッとおさえて、作業を進めてください」。はい。

 昔はモノがなかった。だから捨てることは「もったいない」とされた。「しかし今では、その時代を経験してきた人でも、ひたすらモノを溜め込む一方で、使いきれなくなっている」。「使い切る速度よりも、モノが溜まる速度のほうが速い」のだ。

 「だからこそきちんと家の中のモノをすべて出して、分けて、しっかりと自分で選んで、自分の選んだモノで生活する! という体験をしてもらいたいのです。」

 この「出す→分ける→選ぶ→収める」手順は、文章を書くときの起承転結に隣りあうものだとふと思った。そうなると話はさらに深遠。

 それはともかく、早いうちから「かたづけ」の練習をすること。それをしないと、いまの自分だけではなく、あとの人生にひびくことになる。本書は「収める」の先にあるものとして「出口」を考えるべきだと説く。ひとつのモノ、ひとつのことがらが、最終的にどのようなところへ出ていくのか。最終形を思い描く想像力は「かたづけ」によって、つちかわれる。自分の部屋の問題ではない。空間認識、人間関係、仕事の効率、社会全体に及ぶ。

 その流れや道筋も、著者の体験をもとに記されている。「かたづけ」は人生の基点であり、要なのだ。「かたづけ」だけの問題と、かたづけるわけにはいかないのだろう。

 心がかげったり、落ち込んだりしたとき「かたづけ」で晴れやかになり、未来が見えてくる点にもふれる。「収める」つまり収納では、「間(ま)を取る」という指摘も。先日ぼくは書棚の一段を思い切って「空白」にしたら風景が変わり周囲がとても心地よいものになった。もしかしたらあれかなと思った。「かたづけ」には、いいこと、楽しいことがいっぱいあるのだ。
    --「今週の本棚:荒川洋治・評 『中高生のための「かたづけ」の本』=杉田明子・佐藤剛史著」、『毎日新聞』2014年04月27日(日)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/m20140427ddm015070032000c.html:title]

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