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書評:国民文化研究会・新潮社編『小林秀雄 学生との対話』新潮社、2014年。


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 僕は信ずるということと、知るということについて、諸君に言いたいことがあります。信ずるということは、諸君が諸君流に信ずることです。知るということは、万人の如く知ることです。人間にはこの二つの道があるです。知るということは、いつでも学問的に知ることです。僕は知っても、諸君は知らない、そんな知り方をしてはいけない。しかし、信ずるのは僕が信ずるのであって、諸君の信ずるところとは違うのです。現代は非常に無責任な時代だといわれます。今日のインテリというのは実に無責任です。例えば、韓国の或る青年を救えという。責任をとるのですか。取りゃしない。責任など取れないようなことばかり人は言っているのです。信ずるということは、責任を取ることです。僕は間違って信ずるかも知れませんよ。万人の如く考えないのだから。僕は僕流に考えるんですから、勿論間違うこともあります。しかし、責任は取ります。それが信ずることなのです。信ずるという力を失うと、人間は責任を取らなくなるのです。そうすると人間は集団的になるのです。だから、イデオロギーは常に匿名です。責任を取りません。責任を持たない大衆、集団の力は恐ろしいものです。集団は責任を取りませんから、自分が正しいといって、どこにでも押しかけます。そういう時の人間は恐ろしい。恐ろしいものが、集団的になった時に表に現れる。
    --小林秀雄「講義 信ずることと知ること」、国民文化研究会・新潮社編『学生との対話』新潮社、2014年、46-47頁。

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本書は評論家・小林秀雄が、昭和36年から53年にかけて5回にわたって、全国の学生と交わした講演・対話の記録。録音を文字化したやりとりは、文士・小林の「対話の達人」ぶりをあますことなく生き生きと蘇らせる。贅沢な一冊だ。

自らの手の入らぬ講演速記も録音も許さなかった文士・小林。関係者の情熱が極秘録音という形で残された(新潮社のCDで聞くことが出来る)。小林は志ん生の語りから学んだというが、学生とのやりとりはむしろ自然体で、その豊かな人柄が出ている。

「本当にうまく質問することができたら、もう答えは要らないのですよ」。学生とのやりとりはさながらソクラテスの対話編。講義は「文学の雑感」、「信ずることと知ること」を収録。『本居宣長』執筆中のため、秘密明かすが如き話題が多い。

講演と学生との対話を通読し、驚くのは小林の柔軟な思考態度。
対立的思考を退けながら、矛盾の同居の意義を説き明かす。ベルグソンへの言及も多く「直覚を分析」したことを評価するが、小林の本質把握には瞠目する。

生きた渾身の批評ここにあり!


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