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書評:長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』中公新書、2014年。


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長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』中公新書、読了。旧約聖書に記された物語は神話として扱われるものもあれば、史実のそれも混在する。本書は7つの物語を取り上げ、その史実性を学問的に検証する。語られるメッセージを読み解き、聖書の豊かな世界を案内する好著。

本書が取り上げるのは、ノアの方舟と洪水伝説、出エジプト、エリコの征服、ダビデとゴリアテの一騎打ち、シシャクの遠征、アフェクの戦い、ヨナ書と大魚。

例えば、古代イスラエル史研究の知見によれば「出エジプトは聖書の描写そのままの事件ではなかっただろう」となってしまう。ただし日本の高校世界史の教科書を見てみるとどうだろうか。出エジプトは史実として記載されている。

ユダヤ・キリスト教徒の多い国の教科書であればさもありなんだが、日本の場合、研究動向が教科書執筆者に十分知られてないだけでなく、その研究が日本の歴史学界から遊離もしているのだろう、と著者は指摘する。

本書は、史実性の検証によって物語のメッセージを読みとること、正典化される前の複数の存在とその一本化への経緯を理解することこそ、霊感的充実主義でも科学主義を装い突き放すことでもない、人間理解になるのではと示唆する。

これは旧約聖書だけに限定される問題ではないだろう。学問としてテクストを読むということが、真性な人間理解につながるということは、どの分野においてもはずすことの出来ない観点ではないだろうか。

『聖書考古学』(中公新書)に続く待望の続編。


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