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覚え書:「書評:原発は滅びゆく恐竜である 水戸 巌 著」、『東京新聞』2014年04月27日(日)付。


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原発は滅びゆく恐竜である 水戸 巌 著

2014年4月27日


◆原子力ムラの欺瞞を暴く
[評者]橋本克彦=ノンフィクション作家
 物理学者水戸巌は一九八六年十二月三十日前後、厳冬の北アルプス劔岳で二人の子息とともに消息を絶った。
 本書の論文と講演の記録は故水戸巌が反原発活動に身を挺(てい)した生涯を示すものである。現在、福島原発事故により水戸巌の言葉と活動の正しさは、悲しい現実によって証明された。水戸がもっとも恐れ、渾身(こんしん)の努力で避けようとした過酷事故が起きたのである。
 水戸は原発立地の人々に原発の危険性を説いて寄り添い、東海原発訴訟を牽引(けんいん)して証言し、広範囲におよぶ放射能被害を予測し、原発推進側の論理破綻、技術論的欠陥と欺瞞(ぎまん)を科学的な知見とデータ分析によって暴いた。
 彼は四十年前から正確に原発の実態を告発し続けた。冒頭の「原子力発電はどうしてダメなのか」は基礎的な解説と本質論である。福島原発事故に直接関連する指摘をあげれば、「大事故をひき起こす原因のうち最も大きな可能性があるのは大地震である」「外部電源喪失により致命的事故になる」「高温の金属と水の反応により水素ガスが発生する」。その水素ガス爆発を私たちは福島原発事故で目撃したのである。
 本書によって、原発再稼働をもくろみ、原発を基幹電力とする現政権、経産省官僚、電力会社、背後の金融界など原子力ムラの「うそ」を見抜く根拠が提起された。ぜひとも本書を座右に置いて、原発事故によって苦しむ方々と反原発運動に加わる人々の思考の根拠にしてほしい。
 水戸巌は多くの知人、友人らに敬愛された。彼の息抜きは登山だった。遭難の報に接して多くの人々が捜索と救出に取り組んだ。遺体は翌年の春に発見された。そのようすと感謝は本書編集委員のひとりとして参加した妻喜世子さんが「あとがき」でわずかに述べている。享年五十三。この傑出した人物を哀悼する人々の気持ちはいまも熱い。装丁は長女の晶子さん。本書は家族の本といえるかもしれない。
(緑風出版・3024円)
 みと・いわお 1933~86年。物理学者。人権団体「救援連絡センター」の設立者。
◆もう1冊 
 小出裕章著『原発ゼロ』(幻冬舎ルネッサンス新書)。福島原発事故から三年後の放射能汚染の実態を示し、汚染対策の不備を説く。
    --「書評:原発は滅びゆく恐竜である 水戸 巌 著」、『東京新聞』2014年04月27日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014042702000180.html:title]

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