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覚え書:「書評:市川房枝と「大東亜戦争」 進藤 久美子 著」、『東京新聞』2014年04月27日(日)付。


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市川房枝と「大東亜戦争」 進藤 久美子 著  

2014年4月27日


◆女の力信じはまったワナ
[評者]渡邉澄子=文芸評論家
 国政を担う人たちの歴史認識のお粗末さは戦争責任追及が不徹底だったことに起因していると思う。「婦選は鍵なり」「平等なくして平和なし、平和なくして平等なし」の信念から闘い抜いて、婦選(婦人参政権)を実現させた市川房枝の功績は大きい。本書は「市川房枝とその時代」「婦選運動家市川房枝の戦争協力」の〓部十二章と「序章」「終章」から成る大著である。
 「非戦論から戦争容認・協力へ」の帯の謳(うた)い文句が示しているように、本書の要諦は、十五年戦争後半期における市川の国政関与の跡を細密に糺明(きゅうめい)して検証したところにあるだろう。
 女の人権を認めぬ家父長制度下にあって平等の人権意識から婦選達成に献身した市川は、男性たちは言うも更なり、与謝野晶子や長谷川時雨その他に見られる戦争謳歌(おうか)、軍部べったりが既に常態になっていた中で、非戦論、拡大阻止を毅然(きぜん)として唱え、中国女性との連携も模索していた。その彼女が国政に関与するようになったのは、もはや已(や)むを得ぬ事態と観念したとき、上意下達認容を潔しとせず、女性の力を主体的に発揮しようとした婦選魂が陥った陥穽(かんせい)だったように思われる。時局追随の戦争協力者とは違う。
 敗戦の翌日直ちに政界トップに猛然とアタックして婦人参政権を閣議決定させたのはマッカーサー指令以前だった。公明選挙にも懸命に取り組んだ。だが現今、日本の女性国会議員の割合は約8%で、世界百八十九カ国の中で百二十七位。平等に程遠いばかりか選挙の汚さも相変わらずで、「戦後レジームからの脱却」を目指す政権は戦争のできる国へと驀進(ばくしん)している。この進路を阻止できなければ、同じ轍(てつ)を踏むことになってしまうだろう。
 関東大震災の時に惨殺された平沢計七が「平沢計」になるなどの誤植が気になったものの、本書は、市川の生涯が残した教訓から何を学び、平和を維持するために今をどう生きなければならないかを示した熱塊の書である。
(法政大学出版局・1万260円)
 しんどう・くみこ 1945年生まれ。東洋英和女学院大教授、アメリカ史。
◆もう1冊 
 渡邉澄子ほか編『女たちの戦争責任』(東京堂出版)。国防婦人会や女性作家など、十五年戦争下の女性の動向を女性自らが検証する。
    --「書評:市川房枝と「大東亜戦争」 進藤 久美子 著」、『東京新聞』2014年04月27日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014042702000179.html:title]

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市川房枝と「大東亜戦争」: フェミニストは戦争をどう生きたか
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