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覚え書:「今週の本棚・本と人:『屋根屋』 著者・村田喜代子さん」、『毎日新聞』2014年05月04日(日)付。


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今週の本棚・本と人:『屋根屋』 著者・村田喜代子さん
毎日新聞 2014年05月04日 東京朝刊

 (講談社・1728円)

 ◇主婦と職人の夢の道行き描く--村田喜代子(むらた・きよこ)さん

 「屋根を見るのが好きなんです。住む場所じゃないけど空間はある。あそこに布団敷いて生活したい」と笑う。「場所でない場所」を舞台に、冒険活劇から迫真のラブロマンスへ至る物語を生み出した。帯には「これぞ究極のランデ・ヴー!」。

 デートするのは、平凡な主婦と、九州なまりの武骨な屋根職人だ。真昼の情事かと思えばさにあらず、異なる場所で眠る両人が夢の中で落ち合い、飛翔(ひしょう)して世界の名建築の屋根を巡る。愉快かつ格調高い官能世界をたゆたえること請け合いだ。

 「私」は築18年の木造2階建ての家に住む主婦。雨漏りし始めたが、夫や高校生の息子の手に負えない。そこでプロの屋根屋に修繕を頼むと、永瀬という50代半ばの巨漢がやってきた。「私」の頭上でカタリ、カタリと音が響く。永瀬が瓦をはがしているらしい。<大男が屋根の上で重たいお皿を一枚、二枚と積み上げる姿を想像する。何となく賽(さい)の河原を彷彿(ほうふつ)させた>。この音が「私」を解放させ、アバンチュールへと導いていく。

 永瀬は最愛の妻を亡くした影響で、かつて強迫神経症になった。治って10年たつが、治療のため書いていた夢日記を今も続けている。前の晩に見た夢を書き留めるのだ。自在に夢の中を旅できるという永瀬からノウハウを習い、「私」は一緒に出かける。めくるめくフランスのシャルトル大聖堂や奈良の法隆寺。だが二人は子供ではない。永瀬は「私」に言い募る。<私と一緒に、ここに残りませんか。もしよかったら二人で残って、ここでずっと暮らさんですか>

 「一般的に、夫婦が互いをよく知らないことで成り立っている半面、この二人は体を触ってもいないのにラストでは同志愛を超えていく。心の深部で旅ができる人間関係のすごさを書けたら面白いと思って」。夢の道行きはしかし甘くはなく、「私」は涙を流すことになる。<神様。私の相棒がおりません。どこかへ行ってしまいました>

 二人が眺める屋根の群れは平和を表象している。「小説の時代設定は東日本大震災の前です。まだまだ平和が続くと思っていた……」。原発事故に衝撃を受け、今はもっぱら量子物理学の本を渉猟し、人間と文明を考え続けている。<文と写真・鶴谷真>
    --「今週の本棚・本と人:『屋根屋』 著者・村田喜代子さん」、『毎日新聞』2014年05月04日(日)付。

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[http://mainichi.jp/shimen/news/20140504ddm015070029000c.html:title]

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