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覚え書:「書評:日本の戦争と宗教1899─1945 小川原 正道 著」、『東京新聞』2014年05月04日(日)付。


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日本の戦争と宗教1899─1945 小川原 正道 著  

2014年5月4日

勢力拡大の欲望を秘めて
[評者]成田龍一=日本女子大教授
 石川達三の戦争小説に「従軍僧」が出て来る作品があり、はっと思ったことがある。戦争のなかで、宗教者が反戦・非戦の姿勢を貫いたことは、(著者も言及する)キリスト者、新興仏教青年同盟などの事例があり、知識を有していたが、従軍していた宗教者がいたことにあらためて気づかされた。戦争と宗教との関係は複雑で、まだまだ知られていないことや論点が多くありそうだと、そのときに感じた。
 著者は、この「戦争と宗教」という壮大なテーマを扱うという果敢な行動に出た。本書では二十世紀の戦争-第一次世界大戦、満州事変から日中戦争、アジア・太平洋戦争期における、仏教、キリスト教、神道の活動を論じた。これまでの宗教研究が各派ごとになされていたことからすれば「宗教横断的」であり、これまた大胆な叙述となる。さらには、宗教政策・対策と宗教自身の対応があわせ記されている。
 基本的な流れは、戦争の進展に伴い、宗教各派が戦争に即応し、兵士たちへの慰問をおこない、戦争の地で社会事業や教育活動をし、布教活動をさかんにして教勢の拡張を推進したことの紹介である。他方、軍部も宗教を利用し環境を整えようとした。アジア・太平洋戦争の時期でも趨勢(すうせい)は変わらず、ことは仏教、キリスト教などの宗派のいかんにかかわらないとする。また、植民地や「満州」、南方に日本がつくった神社への言及もなされている。
 こうして戦争と宗教をめぐる動きが俯瞰(ふかん)され、日本人のみならず、現地の統治にも宗教が利用されたことが叙述される。とくに、「道理のある戦争」を説く「戦時教学」の展開、および軍部による神社参拝をめぐって抵抗するミッション・スクールの議論とその顛末(てんまつ)を取り上げた箇所が興味深い。
 ところで、著者がとりあげている対象は、戦争に協力するなか、どこで「宗教」としての歯止めがかかっていると理解したらよいのであろうか。
(講談社選書メチエ・1836円)
 おがわら・まさみち 1976年生まれ。慶応大教授。著書『福沢諭吉』など。
◆もう1冊 
 石川明人著『戦場の宗教、軍人の信仰』(八千代出版)。宗教と軍事、国防と信仰などの視点から、人間や平和について考える論集。 
    --「書評:日本の戦争と宗教1899─1945 小川原 正道 著」、『東京新聞』2014年05月04日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014050402000167.html:title]

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