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覚え書:「書評:女のいない男たち 村上 春樹 著」、『東京新聞』2014年05月11日(日)付。


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女のいない男たち 村上 春樹 著

2014年5月11日


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◆喪失味わうレッスン
[評者]伊藤氏貴=文芸評論家
 女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。一人の女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ-とあるとおり、これは最近はやりの草食男子の話ではない。六つの短篇の主人公は、初めから女に興味を持たないのではなく、かといって女なら誰でもいいというのでもなく、ある一人の女をひどく愛したことのある男たちだ。そして彼らは皆、その女に去られた大いなる喪失感といかに向き合うかに腐心する。
 いや、一人だけ例外がいた。「木野」と題する一篇だけは、タイトルロールを演じる男が、同僚と妻との浮気の現場を目撃した直後、ただ静かに身を引く。どこまでも寛容なのか、それとも一種の不感症なのか。いずれにせよしかし、多くの悲劇のタイトルが主人公の名前を冠されているように、木野だけが自分の思惑を超えた手ひどい不幸に見舞われる。なぜ被害者たる彼がさらなる悲惨を経験しなければならないのか。それは彼が自分の痛みから目を逸(そ)らしてきたからだ。
 喪失感は、言うまでもなくハルキ文学の重要なテーマだが、この短篇集の全体を通じて、十分に喪失を味わうべきことが強調されている。恋愛はそのための重要なレッスン室なのだろう。だから、ここでの教訓は、主に草食男子たちに対するものだ。「恋せよ青年」、そして「青年よ、大いなる喪失感を抱け」と。
 (文芸春秋・1700円)
 むらかみ・はるき 1949年生まれ。作家。著書『海辺のカフカ』『1Q84』など。
◆もう1冊 
 村上春樹著『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫)。一九九五年の神戸の震災をモチーフにした六篇の作品集。 
    --「書評:女のいない男たち 村上 春樹 著」、『東京新聞』2014年05月11日(日)付。

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