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覚え書:「書評:後期20世紀 女性文学論 与那覇 恵子 著」、『東京新聞』2014年05月11日(日)付。


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後期20世紀 女性文学論 与那覇 恵子 著 

2014年5月11日


◆男性優位変容の潮目読む
[評者]千石英世=文芸評論家
 現在の日本文学は女性作家ぬきでは語れない。ここ十年ばかりの芥川賞を調べてみると、二〇〇三年下期の金原ひとみ、綿矢りさのダブル受賞以降一三年下期の小山田浩子まで、受賞者総数二十二人。うち女性作家は十三人。女性優位だ。一方、それ以前の二十二人を調べてみると、女性五人(この数字には藤野千夜を含めている)に対し、男性が十七人。男性優位である。
 芥川賞ばかりが文運隆盛の指標であるわけではないが、この二十年でわが国における文運は、ジェンダー配置が逆転したとはいえそうだ。加えて、現在、「群像」や「新潮」といった文芸誌の編集長は大半が女性。いったい日本文学に何がおきているのか、いや、日本社会に何がおきているのか、おきたのか。社会全体が女性化した? それとも現代日本文学が平安女流文学の水脈に接続した? 
 本書はこうした問いを立てているわけではないが、文運の潮目が一九六〇年代前後にあらわれたとして、それを「後期20世紀女性文学」と呼ぶ。鮮やかな呼称だ。本書は潮目の先駆を岡本かの子(一九三七年「母子抒情」の作者、岡本太郎の母)に見いだし、その本格化を大庭みな子(六八年の芥川賞受賞作「三匹の蟹(かに)」の作者)と三枝和子(八三年の泉鏡花文学賞受賞作『鬼どもの夜は深い』の作者)に見る。
 潮目を導いたのは、戦後日本におけるジェンダーの変容である。敗戦後の日本社会においては男性優位思想の水圧に変化が生じた。そして変化を加速させたのは、上記女性作家たちの果敢なる文学である。精確にいえば、女性とは何かを追究する思想的営為としての文学である。本書は、現代日本における女性文学を思想として解明している。情熱的に。これは思想書の労作なのだ。女性性、エロティシズム、セクシュアリティー、身体性、フェミニズム。しかし、文学は思想に還元されるのかどうか。別の機会に、著者の作品鑑賞を味わいたいところだ。
(晶文社・2160円)
 よなは・けいこ 東洋英和女学院大教授。著書『現代女性文学を読む』など。
◆もう1冊 
 田中弥生著『スリリングな女たち』(講談社)。鹿島田真希、本谷有希子ら、活躍が目覚ましい若手女性作家六人の作品を読み解く。
    --「書評:後期20世紀 女性文学論 与那覇 恵子 著」、『東京新聞』2014年05月11日(日)付。

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